2020 Fiscal Year Research-status Report
Intracellular localization of sulfolipids in Entamoeba
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18K07087
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
見市 文香 (三田村文香) 佐賀大学, 医学部, 講師 (70576818)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コレステロール硫酸 / 脂質組成 / 赤痢アメーバ |
Outline of Annual Research Achievements |
赤痢アメーバはヒトの大腸に感染し、アメーバ赤痢を引き起こす寄生原虫である。我々は赤痢アメーバの硫酸代謝に着目した研究を行っている。硫酸代謝は生物界に普遍的に存在、様々な硫酸化分子を提供する重要な代謝経路である。これまでの我々の研究から、赤痢アメーバの硫酸代謝が含硫脂質代謝に特化し、コレステロール硫酸(CS)を含む6種類の含硫脂質が合成されること、CSがステージ移行であるシスト形成制御に必須な分子であること、栄養体の増殖に必須な含硫脂質が含まれていることを見出した。つまり赤痢アメーバの含硫脂質代謝は、生活環を通じて重要な代謝経路である。本研究では、含硫脂質代謝に必須な基質および代謝産物の輸送を担う輸送体群に着目、それらの同定および特徴を明確化することを目的として研究を開始した。 解析の結果、シスト形成制御に必須な分子であるCSは、輸送体を介するのではなく、細胞膜に直接挿入されることにより機能することを新たに見出した。培地中にCSを加えると、濃度依存的に細胞膜の形態変化を引き起こすこと、生体膜の脂質組成を大きく変動させることを見出した(見市、未発表)。赤痢アメーバのシスト形成過程では膜構造が大きく変化することから生体膜脂質の質および量が大きく変動することは予想される。しかしながら、これまで網羅的に解析した報告は皆無であった。 そこで、我々自身が、シスト形成誘導に伴いその質および量が大きく変動する脂質種の同定を目的として、シスト形成を誘導後経時的に回収した細胞のnon-targeted lipidome解析を行った。その結果、スフィンゴ脂質およびリゾリン脂質が大きく変動すること、リン脂質についてはほとんど変動しないことを見出し、既に論文発表した(Mi-ichi et al, mSphere, 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤痢アメーバの輸送体候補遺伝子について、それぞれの遺伝子の発現抑制株の作製を完了、また発現抑制株の表現型解析はほぼ終了した。現在までのところ有望な輸送体候補の同定には至っていないが、同時進行させていた輸送体非依存的過程の解析で、コレステロール硫酸(CS)が直接細胞膜に挿入される可能性を見出した。さらに、CSが細胞膜の形態変化を引き起こすこと、生体膜の脂質組成に影響を与えることを見出した。 コレスCSについては、シスト形成の制御に関与することは既に報告しているが、その制御における分子機構は不明であった。本申請研究中にCSが生体膜の形態、脂質組成に影響を与えることを見出せたことにより、CSの新規機能の解明に繋がることが期待できる。残り1年で新規機能の提示、そして論文報告することを予定している。以上のことから、申請研究はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
[計画1] コレステロール硫酸(CS)による生体膜の形態および脂質組成に与える影響の解析を行う。既に見出したCSによる生体膜の形態変化が、CSが生体膜に挿入された後、どのように引き起こされるかを明らかにするために、関与する分子群の同定を試みる。具体的には、コレステロール硫酸を培地に添加後、細胞内に生じる変動について、特に、脂質変動や遺伝子変動を経時的・網羅的に解析、CSと機能的関連性のある候補分子群を見出す。⇒ CSの新規機能の提示を目指す。 [計画2] CSが与える生体膜の形態変化の生理的意義を解明する。CSの添加によって引き起こされる生体膜の微細構造変化を、電子顕微鏡解析によって解明する。我々自身の研究により、通常のシスト形成誘導によって引き起こされる生体膜の変化について、既に論文報告を行った(Mousa A et al, Parasitology, 2020)。この情報を基に、CSが与える生体膜の変化を詳細に解析する。⇒ CSの新規機能の提示を目指す。 [計画3] CS以外の含硫脂質(fatty alcohol disulfates)の輸送系についても、これまでの解析法に改良を施し(複数遺伝子の同時発現抑制・高発現、それらとリピドーム解析との併用)さらに進行させる。⇒ 含硫脂質の細胞内輸送系の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
理由)実験計画の一部変更により実験を次年度行うこと、また論文投稿も次年度中に行うため、次年度使用額が生じた。 使用計画)培養器具や分子生物学実験用試薬などの購入および論文掲載料を予定している。
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