2018 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織を基軸とした新たな妊娠マラリア病態発症機構の解明
Project/Area Number |
18K07093
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
新倉 保 杏林大学, 医学部, 講師 (30407019)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 富美恵 麻布大学, 生命・環境科学部, 客員教授 (20118889)
井上 信一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20466030)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | マラリア / 妊娠 / 乳腺組織 / 比較プロテオーム / IFNGR1 |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア原虫に感染した妊婦において、マラリア原虫感染赤血球の胎盤絨毛管腔への集積は胎児の子宮内発育不全や早産、流産、死産などの妊娠転帰の不良に関わることが知られている。一方、妊娠中のマラリアのマウスモデルを用いた研究により、妊娠マウスの脂肪組織におけるマラリア原虫感染赤血球の蓄積量は、非妊娠マウスの脂肪組織と比較して有意に増加することが示されている。この感染赤血球の脂肪組織への蓄積は、妊娠中のマラリアの病態重症化に関わると推測されるが、その関係は明らかにされていない。そこで本研究では、まず、妊娠による脂肪組織への影響を明らかにするために、脂肪組織の組織学的解析を行った。その結果、妊娠マウスの脂肪組織では乳腺が著しく発達し、さらにマラリア原虫を感染させた妊娠マウスの乳腺組織の毛細血管に感染赤血球が集積していることを見出した。 次に、感染赤血球の乳腺組織への蓄積と妊娠中のマラリア病態重症化との関係を明らかにすることを目的として、強毒株マウスマラリア原虫Plasmodium berghei ANKAを感染させた妊娠マウスの乳腺組織と非感染妊娠マウスの乳腺組織からタンパク質を抽出し、比較プロテオーム解析を行った。その結果、マラリア原虫を感染させた妊娠マウスの乳腺組織において、Signal transducer and activator of transcription 1やInterferon-inducible GTPase 1などのIFN-γによって発現が誘導される分子が著しく増加していることを見出した。一方、IFN-γ receptor 1 (IFNGR1) を欠損した妊娠マウスの乳腺組織では、これらの分子の増加は認められなかった。これらの結果から、マラリア原虫を感染させた妊娠マウスの乳腺組織において、IFNGR1依存的な炎症反応が誘導されることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究によって以下の結果が得られた。 1. マラリア原虫感染赤血球は妊娠マウスの乳腺組織の毛細血管に集積することを見出した。これらの結果から、乳腺組織は妊娠マラリアの早期診断に有用であることが示唆された。 2. マラリア原虫を感染させた妊娠マウスの乳腺組織においてIFNGR1依存的な炎症反応が誘導されることが示された。これらの結果から、マラリアに罹患した妊婦において、乳腺炎による乳房の痛みや腫れ、発熱などを来たしている可能性が示唆された。 本研究成果によって、妊娠マラリアの診断における乳腺組織の有用性が示唆された。よって、本年度の目的は達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. マラリア原虫感染赤血球の脂肪組織への集積には、妊娠時に脂肪組織で特異的に発現する宿主側の分子が関与すると推測される。そこで、脂肪組織の比較プロテオーム解析の結果から感染赤血球の接着に関わると推測される分子を選別し、遺伝子改変マウスなどを用いて感染赤血球の脂肪組織への集積機構について解析を進める予定である。 2. マラリア原虫を感染させた妊娠マウスの乳腺組織ではIFNGR1依存的な炎症反応が誘導されることから、IFNGR1を介して誘導される分子を欠損したマウスなどを用いて、妊娠中のマラリア病態重症化機構の全容解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
本年度、試薬代を節約できたため次年度使用額が生じた。次年度、この予算で妊娠中のマラリアの病態解析に係る試薬等の消耗品の購入を計画している。
|