2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪組織を基軸とした新たな妊娠マラリア病態発症機構の解明
Project/Area Number |
18K07093
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
新倉 保 杏林大学, 医学部, 講師 (30407019)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 富美恵 麻布大学, 生命・環境科学部, 客員教授 (20118889)
井上 信一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (20466030)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | マラリア / 授乳期 / 乳腺組織 / 生体イメージング / 比較プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究成果により、授乳期のマラリアによって乳腺炎が引き起こされることを見出している。本年度は、マラリアによる乳腺炎の発症機構を明らかにするために、マラリア原虫を感染させたマウス体内におけるマラリア原虫感染赤血球の局在解析と乳腺組織の比較プロテオーム解析を行った。 ルシフェラーゼを発現するマラリア原虫を用いた生体イメージングにより、宿主体内でのマラリア原虫感染赤血球の局在を捉えることが可能である。そこで、ルシフェラーゼ発現原虫を授乳期のマウスに感染させ、授乳期のマウスにおける感染赤血球の局在を解析した。生体イメージングによる解析の結果、授乳期のマウスの乳腺組織では、非授乳期のマウスの乳腺組織と比較して、マラリア原虫感染赤血球の蓄積が有意に低下することを見出した。乳腺組織の比較プロテオーム解析の結果、感染赤血球の蓄積に深く関わるCD36のタンパク質量は、非感染マウスと感染マウスの乳腺組織で同レベルであった。これらの結果から、授乳期のマウスの乳腺組織由来の因子が感染赤血球に結合し、感染赤血球の接着能を低下させることが示唆された。 マラリア原虫を感染させた授乳期のマウスの乳腺組織において、IFN-γによって発現が誘導される分子が著しく増加することを見出した。これらの分子はマラリア原虫を感染させた非授乳期のマウスの乳腺組織でも増加が認められたが、授乳期のマウスと比較して低レベルであった。これらの結果から、授乳期の乳腺組織は、非授乳期の乳腺組織よりも炎症を起こりやすいことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究によって以下の結果が得られた。 1.授乳期のマウスにおけるマラリア原虫感染赤血球の局在を明らかにした。 2.マラリア原虫感染赤血球の蓄積に深く関わるCD36のタンパク質量は、授乳期の乳腺組織において変化しないことが示された。 3.比較プロテオーム解析によってマラリア原虫を感染させた授乳期のマウスの乳腺組織において、IFN-γによって発現が誘導される分子が著しく増加していることを見出した。 本研究成果によって、授乳期にマラリア原虫に感染すると、非授乳期と比較してマラリアの病態が重症化することが示唆された。よって、本年度の目的は達成された。
|
Strategy for Future Research Activity |
授乳期のマラリアは、非授乳期のマラリアと比較して重症化するのかを検証する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:本年度、新型コロナウイルス感染対策のため研究活動を一部自粛した。その結果、消耗品代を節約できたためため次年度使用額が生じた。 次年度の研究費の使用計画:検証に係る試薬等の消耗品の購入(約10万円)の購入を計画している。また、論文投稿の際の英文校閲と投稿費(約20万円)の支払いを計画している。
|