2018 Fiscal Year Research-status Report
血中のアスペルギルスのbiofilm形成促進因子の探索とアゾール薬耐性化の抑制
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18K07103
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
亀井 克彦 千葉大学, 真菌医学研究センター, 教授 (10214545)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Aspergillus / biofilm / drug resistance / fetuin A |
Outline of Annual Research Achievements |
・目的:Aspergillus fumigatusのbiofiom形成はアスペルギルス症の難治化の観点から、また近年世界的な問題となっている耐性菌発生の母地となる点からも極めて重要である.我々はヒト血清中のfetuin Aがbiofilm形成を促進することを見いだしたが、血清中にはその他にも同等の強い活性を持つ物質の存在が示唆されている。この研究はこの新たなbiofilm形成促進因子の発見と関連遺伝子の探索を通じて,治療に結びつけることを目的としている。 ・基礎的測定法の開発:まずこれまでbiofilmのサイズの判定に用いられてきた煩雑な乾燥重量測定法に代わる手法としてbiofilm定量法の検討を行い、新たな定量法を確立した。以後の検討はこれを用いた。 ・血清中の新たな活性物質の探索:血清の分画を行って検討した結果、10kDa以下の低分子量の画分にfetuin Aとほぼ同等の強度を持つbiofilm誘導活性を認めた。SDS-PAGEを用いた解析を進めており、因子の濃度が低いことから未だ十分な可視化が得られていないものの,濃縮により因子の同定を進めている。並行して,血清中に上記の低分子物質とは異なる新たな因子を1つ(タンパク質Xと仮称)を確認し,本物質とA. fumigatusとの結合が示唆された。新たなbiofilm促進物質の候補として検討を進めている。 ・比較ゲノム法などによるbiofilm関連遺伝子の解析:同一患者由来で同一クローンでありながら、通常の方法では薬剤感受性が大きく異なっているA. fumigatus の株を多数得ることに成功した。これらの株にはアゾール薬について感性~多剤耐性まで感受性の大きく異なる株が含まれており、予備実験ではbiofilm形成能にもある程度の相違が認めらたため,現在詳細な検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定されていた各研究項目の進行状況は以下のとおりである ・血清中に存在するAspergillus fumigatusのbiofilm(ECM)形成促進物質の分離・同定: 目的としていたfetuin Aとほぼ同等のbiofilm促進活性を持つ物質をほぼ単離することが出来た.さらに、当初想定していなかった新たな活性物質の候補も見いだすことが出来た。これらにより血清の持つbiofilm形成促進因子の大部分をカバーできるものと推測される。
・Biofilm形成に関与する遺伝子の探索研究: 当初,同じ菌種でありながらECM形成能の異なる株同士を用いて比較検討することを予定していたが,由来の異なった株の直接的な比較は解釈が複雑化するという問題を可及的に回避するため,まずゲノムの比較が容易な同一クローンでの探索を優先させた。その結果,同一患者由来でありSTR解析にて同一クローンであることが確認されているにも拘わらず、itraconazole,voriconazole,posaconazoleといった各種のアゾール薬に対してさまざまなパターンの感受性を示すAspergillus fumigatus の菌株を10株得ることが出来,さらに、予備実験ではこれらの株間でbiofilm形成能の相違を確認した。そこでまず予備的にMALDI-TOF MSによるパターンでの比較を試みたが明らかな相違が見いだせなかったため,現在詳細な遺伝子解析を進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
・血清中に存在するAspergillus fumigatusのbiofilm(ECM)形成促進物質の分離・同定について: 現在,解析が進んでいる活性物質に加えて,新たに発見された候補物質について質量分析などを用いた同定作業を進める.確認できればその機序,遺伝子発現の解析,ついで破壊株の作成とそのphenotype(biofilm作成能)の確認を行う.破壊株などについて適宜、電子顕微鏡による詳細な形態観察を進める.
・Biofilm形成に関与する遺伝子の探索研究について: 現在得られた同一クローンでのbiofilm形成能の詳細な確認とこれらの比較ゲノム法による解析を推進する.並行して,biofilm形成能の異なる菌株でparasexual reproductionを発生させ,それにより得られた株間の比較ゲノム解析を行い,biofilm形成に関与する遺伝子の特定を進める.一般的にparasexual reproductionの成功率は必ずしも高くないが,遺伝子の機能を解析する上で極めて有力な情報を得られるものと期待されることから、ぜひ試みたいと考えている.
・なお、別に推進してきた共同研究から、Streptococcus pneumoniaeのもつ酵素によりA. fumigatusのbiofilm破壊がもたらされる可能性が示された。本研究が最終的に目指している「bioflmの塊ともいえるfungus ballの破壊・抑制」という観点から、この解析を進めることも検討している.
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Aspergillus fumigatus adhesion factors in dormant conidia revealed through comparative phenotypic and transcriptomic analyses2018
Author(s)
1.Takahashi-Nakaguchi A, Sakai K, Takahashi H, Hagiwara D, Toyotome T, Chibana H, Watanabe A, Yaguchi T, Yamaguchi M, Kamei K, Gonoi T
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Journal Title
Cell Microbiol
Volume: 20
Pages: e12802
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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