2019 Fiscal Year Research-status Report
ピロリ菌CagAタンパク質による病原シグナル生成の構造-機能連関解析
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18K07105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 剛瑠 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (10722209)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胃がん / ピロリ菌 / CagA |
Outline of Annual Research Achievements |
ピロリ菌病原因子CagAが宿主細胞内において病原シグナルを生成するためには、Src/AblキナーゼによるCagAのチロシンリン酸化修飾を介したSHP2との複合体形成が重要であることが報告されている。前年度までの各精製タンパク質を用いたプルダウン実験により、このCagA-SHP2相互作用はCagA-PAR1b相互作用によって促進される一方CagA-Csk相互作用によって抑制されることを見出した。過去の文献的に、CskはSH3ドメインを介してホモダイマーを形成しうることが示されている。このCskの二量体化がCagA-Csk相互作用に及ぼす影響を検討した。はじめに、SH3ドメインに点変異を導入した3つの組換えCsk変異体コンストラクトを作成した。これらのCsk変異体を大腸菌菌体内で発現させ組換えタンパク質を精製した。精製したCsk変異体は野生型Cskに比較し、ゲルろ過クロマトグラフィー解析において顕著に溶出ピークが後方へシフトした。また野生型CskとCsk変異体はそれぞれ単一の溶出ピークを示した。この結果は、本実験条件下においてSH3ドメイン間の相互作用が極めて強固であり野生型Csk分子のほとんどは二量体として存在し、その二量体化にはSH3ドメインが責任的に働くことを強く示唆する。GSTプルダウン実験によりCagAとCskの相互作用を解析したところ、野生型Cskに比較しSH3ドメインに変異を導入したCsk変異体ではCagAとの相互作用能が著しく低下した。したがって、CagA-Csk相互作用はCskの二量体化により促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CagAが細胞内で形成するシグナル撹乱複合体の形成機序についてCskの非酵素反応的な分子機構が関与するという新たな知見が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
CagAと相互作用するPAR1bとCskのいずれも間接的あるいは直接的に二量体化することが明らかになってきたため、この各種二量体化が及ぼすサブユニット間相互作用への影響を生化学的に解析していく。
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Research Products
(1 results)