2019 Fiscal Year Research-status Report
部位特異的光架橋を用いた細菌III型分泌装置のタンパク質膜透過経路の解明
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18K07108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺島 浩行 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (60791788)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細菌べん毛 / タンパク質分泌 / 輸送装置 / III型分泌装置 / in vitro再構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の持つ運動器官「べん毛」は、病原性に関わるIII型分泌系に属するタンパク質輸送装置を持つ。べん毛輸送装置は、5種類の膜タンパク質からなる輸送ゲートと、3種類の細胞質タンパク質からなるATPase複合体で構成されている。分泌された構成タンパク質は、細胞膜側から順にロッド、フック、フィラメントという線維構造を形成する。しかしながら、基質となべん毛線維の構成タンパク質がどのような過程を経て、細胞外へと膜透過されるのか十分に理解されていない。そこで、基質タンパク質の分泌過程をin vitroで再構成し、べん毛輸送装置との間に部位特異的光架橋法によって架橋形成させる。最終的には、べん毛タンパク質がどのような過程・経路を経て、細胞外へと分泌されるのか明らかにする。本年度の研究では、(1)反転膜小胞を用いたin vitro輸送計測系によって、べん毛線維を形成するフィラメントタンパク質、べん毛線維の形成を助けるフィラメントキャップタンパク質、フィラメントとフックをつなぐジャンクションタンパク質の輸送とべん毛線維構築の再現を試みた。(2)光架橋性アミノ酸を含んだGFP融合基質タンパク質とべん毛輸送装置との間で光架橋の形成を試みた。まず、(1)これまでにin vitro再構成系では、フックの構築まで再現できていた。そこで、フックの先にフィラメント構造を構築させ、フィラメントタンパク質の輸送機序について解析した。次に、(2)光架橋性アミノ酸を含んだGFP融合基質タンパク質の輸送・架橋実験を行った。昨年度までの研究から継続して、in vivo、in vitro両面からべん毛輸送装置タンパク質と架橋形成を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、べん毛タンパク質が、どのようにべん毛輸送装置にターゲットされ、どのように膜透過してくのかを明らかにすることを目指している。本年度の研究では、昨年度から引き続き、光架橋性アミノ酸pBPAを導入し、またC末端にGFPを融合した、変異型輸送基質タンパク質の輸送アッセイと光架橋を行った。しかしながら、昨年度に見出した輸送ゲートタンパク質FlhAと架橋する残基の解析は、再現性の確認を含めて進めているが、十分に膜透過経路であることを示すまでには至っていない。現在鋭意解析しているところである。べん毛形成は、非常に秩序だって進行する。そのため、べん毛タンパク質ごとに、べん毛輸送ゲートへのターゲティング、膜透過過程に違いが存在するかもしれない。これまでに確立した反転膜小胞を用いたin vitroでの輸送再構成実験系を使い、全ての輸送基質タンパク質の輸送を再現した。これまでに、フックの構築と、フック長を55nmに制御することに成功していた。そこで、フックの先に形成されるフィラメントの形成を解析した。フィラメントタンパク質は、55nmに制御された正常なフックが形成されたときのみ輸送された。また、フックとフィラメントの形成に必要なべん毛タンパク質を反応溶液に加えるだけで、フックとフィラメントを形成することができた。このことは、輸送されるべん毛タンパク質とべん毛輸送装置のみによって十分にべん毛線維構造を構築可能であることを示している。こちらの研究は順調に進み、基質タンパク質ごとの輸送過程を解析するツールをそろえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、輸送基質は、輸送ゲートFlhBによって選別され、輸送ゲートFlhAの細胞質ドメインを介して輸送ゲート内へと導かれ、その後、FliP、FliQ、FliRからなる複合体の内部を通って細胞外に輸送されると考えられている。最新の複合体構造解析の結果から、FliP、FliQ、FliRが輸送ゲートの出口側で輸送チャネルを形成し、FlhBはFliRと相互作用して輸送ゲートの一部を形成することが示された(Kuhlen et al 2018 Nature Struc.Mol.Biol.、Kuhlen et al 2020 Nature Communications)。残念ながらFlhAが形成する輸送ゲートの入り口側に関する情報はほとんどない。本研究によって、輸送ゲートへのターゲティング、輸送ゲート内へのべん毛タンパク質の挿入、膜透過過程を明らかにできると考えている。これまでの2年間で、輸送基質タンパク質に光架橋性アミノ酸pBPAを導入させ、FlhAと光架橋の掛かる残基を見出すことに成功した。また、in vitro再構成系において、べん毛線維構造を完全に再構成することに成功した。次のステップとして、タンパク質輸送時の基質‐輸送ゲート間相互作用マップの作成を目指す。そのために、輸送ゲートFlhA側に光架橋性アミノ酸pBPAを導入し、輸送基質と架橋させることも視野に入れる。また、ATPase複合体であるFliI、FliJ、輸送ゲートFlhAの細胞質ドメインは、フィラメント型タンパク質とそのシャペロンタンパク質と相互作用することが知られている。そこで、輸送基質にロッド・フック型タンパク質だけではなくフィラメント型タンパク質を使い、比較することを考えている。
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Research Products
(3 results)