2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of substrate recognition mechanism of bacterial collagenases to develop angiogenic drug seeds
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18K07111
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松下 治 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00209537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
美間 健彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (80596437)
内田 健太郎 北里大学, 医学部, 講師 (50547578)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ガス壊疽菌群 / 細菌性コラゲナーゼ / 基質アンカー・モジュール / 歯周病 / 歯槽骨再生 / 神経再生 / 組織学的解析 / 行動学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌性コラゲナーゼは、触媒モジュールと基質アンカー・モジュールよりなる。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を基質アンカー・モジュールと融合(CB-bFGF)して、bFGFをコラーゲン基剤に結合し、bFGFの組織修復能を局所で長期間発揮させることができた。本複合剤を整形外科領域で骨移植や重症骨折後の骨新生誘導に応用できた。 本課題では、歯周病による歯槽骨の水平欠損に対する本複合剤の有用性をラット・モデルにより検討した。CB-bFGF固相化コラーゲンを骨欠損部に充填することで、有意な骨形成を誘導できた。オステオカルシン、proliferating cell nuclear antigen、オステオポンチン陽性細胞が増加することを示した(論文1)。生体内でのCB-bFGFの薬物動態と治療効果を明らかにするため、イヌを用いた前臨床研究を実施し解析を進めている(論文準備中)。 CB-bFGFを用いた神経再生を試みた。「ナーブリッジ」は、我が国で開発された神経再生用医療機器である。ポリグリコール酸製の外鞘の内腔にコラーゲンを充填した構造を有し、神経欠損部に固定して中枢側から伸長する自己神経を末梢側へ誘導する。CB-bFGFにより神経再生に必要な血管などの支持組織を効果的に誘導できれば、本機器による神経再生を促進できる。15mmにわたり坐骨神経を欠損したラット・モデルを作成し、CB-bFGFを固相化したナーブリッジによる神経再生を組織学的、行動学的に検討した。8週後のミエリン繊維の再生は、CB-bFGF群ラットでは7/8 (87.5%)、bFGF群では3/8 (37.5%) 、PBS群では1/8 (12.5%)に認められた。また4週後の歩行機能を足跡面積を用いて評価したところ、CB-bFGF群ラットは、bFGF群、PBS群より優位に広範囲の歩行が認められた(論文2)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の大きな目的は、これまでに整形外科領域で培ったCB-bFGF・コラーゲン複合剤による再生治療を、1)まず歯科領域で歯周病による歯槽骨欠損後の再生に展開すること、2)次に神経再生領域に展開することであった。前者には、口腔内は無菌環境ではないため、多量の常在細菌存在下で複合剤の有用性を発揮させること、後者には間葉系とは全く異なる神経組織を再生させることに、大きな障壁が予想された。前者は大型動物を用いた前臨床研究が思いの外進展し、実用化に向けて歩を進めることができた。他方で、後者は全く新しい挑戦であり、神経再生の促進を認めない厳しい状況が続いていた。生分解性の高いポリグリコール酸外鞘の内腔にコラーゲンが充填された医療機器に着目し、外鞘の高い透過性を利用して内腔のコラーゲンにCB-bFGFをアンカリングすることで、まずコラーゲン内腔に神経再生に必要な結合組織を再生し、結果として神経再生を有意に促進できた。結果は当たり前にも見えるが、失敗の連続に基づく発想の転換があった。2つの全く異なる領域での組織再生について、それぞれ論文として発表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コラーゲン結合型塩基性線維芽細胞増殖因子(CB-bFGF)の基質アンカー・モジュールとして、Clostridium histolyticum ColHコラゲナーゼに由来するPKDドメインとコラーゲン結合ドメイン(CBD)を用いた。CBDはβ-サンドイッチ構造を有し、片側のβ-シート中央部に露出した疎水性残基が基質結合に寄与することが判明している。PKDドメインもβ-サンドイッチ構造を有し、片側のβ-シート中央部に疎水性残基が露出していることは判明しているが、これらの残基が基質結合に寄与するか否かは未だ不明である。そこで、これらの残基を親水性残基に替えた変異タンパク質を作製し、基質結合能を定量する。また、同様の変異を有する全長コラゲナーゼを作製して、不溶性基質の水解活性を定量する。これらにより、PKDドメインが不溶性基質への結合に寄与するか決定する。 加えて、小分子量であり、かつ不溶性基質への高い結合能を有する新しいコラーゲン・アンカーを探索する。まず、C. histolyticumのゲノム配列を決定し、菌体を組織に結合させるコラーゲン・アドヘジン等のコラーゲン・アンカーを探索する。候補タンパク質の基質アンカー・モジュールを生産し、不溶性コラーゲンに結合することを示す。さらに、bFGFとの融合タンパク質を作製して、in vitro, in vivoにおけるコラーゲン結合能と細胞増殖促進能を定量する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、タンパク質生産と海外共同研究先への送付に遅延が生じたため。これらは令和2年度に実施する。
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Research Products
(8 results)