2019 Fiscal Year Research-status Report
薬剤耐性クラスD β-ラクタマーゼのカルバペネム加水分解触媒機構
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18K07118
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
齊野 廣道 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40525549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多剤耐性菌 / カルバペネム / ラクタマーゼ / 抗菌薬 / アシネトバクター / OXA-58 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルバペネム耐性菌は院内感染によって重篤な感染症を引き起こし、抗菌薬最後の切り札とされるカルバペネムにも耐性を持つことから、薬剤耐性菌の中で最も警戒され有効な抗菌薬の開発が急務である。特に Acinetomacter baumannii を代表とするカルバペネム耐性アシネトバクターは、2017 年には WHO が作成した多剤耐性菌の抗菌薬開発優先度ランクで最も深刻 (Critical) とされ、また米国 CDC が 2019 年に発表した同様の薬剤耐性菌リストでも (Emergency) と表現され最も警戒度の高い薬剤耐性菌に分類された。アシネトバクターのカルバペネム耐性機構の中で、カルバペネム系抗菌薬を加水分解することで耐性の原因となる酵素に注目して研究している。クラス D β-ラクターゼに分類されカルバペネムに対する分解活性を獲得した酵素の結晶構造解析と、変異・反応速度解析など構造・機能の両面からカルバペネムの分解機構を解明し、新たな抗菌薬開発の一助となることを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結晶構造解析によってカルバペネムとの相互作用が確認されたアミノ酸についてアラニン置換変異体の作成と反応速度論解析を行い、カルバペネムの分解速度に寄与の大きい相互作用をつきとめた。またこれまでアシル中間体として存在するとされたカルバペネムの二つの異性体について、カルバペネム分解の反応経路の手がかりとなる速度論データが得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
カルバペネム類の中でイミペネム、メロペネムやドリペネムを含めた速度論解析を行い、アミノ酸置換の効果の確認とカルバペネム骨格の側鎖構造の影響について比較する。またカルボキシ化リジンに結合した水分子と水素結合ネットワークを作るアミノ酸のカルバペネム分解に対する寄与についても研究を進める。
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Causes of Carryover |
抗菌薬の原薬供給が逼迫する中で価格が高騰しており、活性測定用のカルバペネム類の購入に予算が必要であると予想していたが、試薬の消費量を減らす努力に加えて、期待通りの活性測定データが比較的早く得られ消耗品のコストが下がったため。翌年度分の助成金と合わせて、計画時には予算の都合上見合わせていた、より多角的・発展的な実験や分析を行うことで、研究目的の達成に役立てる。また論文発表時に オープンアクセスに必要な料金の支払いに充てるなど、研究成果の公知に役立てる。
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