2020 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤耐性クラスD β-ラクタマーゼのカルバペネム加水分解触媒機構
Project/Area Number |
18K07118
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
齊野 廣道 青山学院大学, 理工学部, 助教 (40525549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / カルバペネム / アシネトバクター |
Outline of Annual Research Achievements |
カルバペネム耐性菌は最も警戒される薬剤耐性菌であり、これまで多剤耐性菌にも有効な抗菌薬であったカルバペネムに対しても耐性を示すことから、カルバペネム耐性菌に有効な新規抗菌薬の開発を最優先課題として位置付ける勧告が2017年からWHOや米国CDCによって発せられている。中でもアシネトバクター属の常在菌であるカルバペネム耐性アシネトバクターは、ICU内の院内感染によって重篤な肺炎を引き起こす。本研究では、新しい抗菌薬の開発に資するために、アシネトバクター・バウマニ由来のカルバペネム分解酵素であるOXA-58の構造機能研究によって、抗菌薬カルバペネムの分解機構を分析し報告した。OXA-58 の X 線結晶構造解析によって、OXA-58 のカルバペネム分解活性を大幅に上昇させる活性残基の翻訳後修飾であるカルボキシ化リジンが、水素結合ネットワークによって酵素の安定性を増大させることが明らかになった。OXA-58がカルバペネムを分解する過程で生じる酵素-薬剤複合体であるアシル中間体の X 線結晶構造解析によって、OXA-58 がカルバペネム分解において薬剤を捕捉し、カルバペネムの β-ラクタム環を分解したのち、加水分解反応に至る反応機構にとって重要な活性部位の立体構造を解析した。その構造から、加水分解にとって重要なステップである加水分解を触媒する水分子の結合や、酵素活性部位内で起こるカルバペネム骨格の異性化反応など、通常の β-ラクタム系抗菌薬の分解過程とは異なる複雑な反応機構が示唆された。
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