2020 Fiscal Year Research-status Report
マクロファージ細胞死に誘導されるサルモネラ腸炎発症機構の解析
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18K07119
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
岡田 信彦 北里大学, 薬学部, 教授 (80194364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルモネラ / マクロファージ / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルモネラは食中毒の原因菌として知られており、本菌に汚染された食品や飲料水を摂取することで胃腸炎や敗血症を引き起こす。このようなサルモネラの病原性には独立した2つのIII型分泌機構(T3SS)-1および2が重要な役割を果たし、菌体から宿主細胞に直接打ち込まれた後、細胞内のタンパク質を相互作用を示すIII型エフェクターがその病原性を規定する。本研究はサルモネラの増殖の場であるマクロファージに注目し、III型エフェクターによる細胞死誘導機構を解明することで、サルモネラ腸炎発症機構との関連を明らかにする。 これまでにS. Typhimuriumのマクロファージに対する細胞傷害性に関わる5つのエフェクターを同定し、これらエフェクターをコードする遺伝子の全てを欠失した株を腸炎モデルマウスに感染しても腸炎が認められないことを明らかとした(Matsuda et al. 2019 IAI)。また、S. Typhimuriumを感染した腸炎モデルマウスの盲腸の遺伝子発現プロファイル(未発表データ)から炎症性細胞死の責任遺伝子(A-C)を抽出した。これらの遺伝子をCRISPR/Cas9法によりノックアウトした RAW細胞を用いてLDH assayを行った結果、T3SS-1欠損株を感染させたRAW細胞と比較して遺伝子Aノックアウト細胞では細胞傷害性に有意差は認められなかったが、遺伝子 Bノックアウト細胞または遺伝子Cノックアウト細胞において細胞傷害性が有意に減少していた。このことから、S. Typhimuriumによるマクロファージに対する細胞死では、遺伝子Bおよび遺伝子Cが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度はS. TyphimuriumのT3SS-2依存的細胞死に関わる宿主因子BまたはCがT3SS-2依存的腸炎に関与するか否かを明らかにするため、宿主因子BまたはCの遺伝子欠損マウスを用いた機能解析を行う予定であった。しかしながら、COVID-19パンデミックの影響により、これら遺伝子欠損マウスを入手することが困難となり、実験を中断した。
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Strategy for Future Research Activity |
宿主因子BまたはCの遺伝子欠損マウスの新たな入手先を再検討するとともに、入手できないことも想定し、実験計画を一部変更した。 本研究ではこれまでに、マウスマクロファージ様細胞RAW264.7に細胞死を誘導しないT3SS-2エフェクター欠損株では、腸炎モデルマウスの感染において腸炎が誘導されないことを明らかにした。しかしながら、感染のどの過程においてマクロファージの細胞死が誘導されているのか、S. Typhimuriumのin vivoにおけるマクロファージ細胞死と腸炎誘導の関係は不明である。 そこで本年度は、感染マウスの臓器および組織から細胞を抽出し、FACSによりどの臓器または組織においてマクロファージが細胞死を起こしているのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックの影響により、遺伝子欠損マウスを用いた感染実験を中断した。本年度は中断した実験を行う予定ではあるが、遺伝子欠損マウスを入手できないことも考慮し、新たな実験を計画した。助成金は主にマウスの購入、維持、管理に使用するが、その他、FACSに必要な酵素や抗体を購入する。
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