2019 Fiscal Year Research-status Report
新規に見出されたボツリヌス毒素複合体の細胞認識における「機能シフト機構」の解明
Project/Area Number |
18K07123
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
相根 義昌 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (00624660)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 蛋白質 / 毒素複合体 / ボツリヌス毒素 / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
ボツリヌスC型菌が産生する神経毒素複合体は、5種のタンパク質が結合した14量体のタンパク質である。その分子内の構成成分の一つであるHA-33は、小腸上皮細胞に結合し、小腸からの体内への侵入に関与することが明らかになっている。一方、北海道余市町のミンク飼育場において発生した家畜ボツリヌス症の原因菌C型菌Yoichi株(C-Yoichi)の毒素複合体は、他のC型菌由来毒素複合体とは異なり、HA-33タンパク質のC末端31残基が欠落していること、さらに、細胞への結合において他の毒素が末端にシアル酸を有する糖鎖を認識するのに対し、C-Yoichi株由来のそれはガラクトースを末端にもつ糖鎖を認識することが明らかにされていた。本研究では、C-Yoichi由来のHA-33タンパク質が培養液中でC末端領域の欠落を引き起こし、それに伴い糖鎖認識がシアル酸認識型からガラクトース認識型に変化する可能性を見出した。本年度は、HA-33のC末端領域の欠落と細胞認識機構との関係性を明らかにするため、組換え大腸菌によるC末端欠落HA-33の合成、HA-33のC末端欠落に関与するプロテアーゼの探索を試みた。 HA-33のC末端領域の欠落部位に停止コドンを導入したha-33の変異遺伝子を作成し、大腸菌に導入することに成功したが、タンパク質の発現が確認されなかったことから、今後は、使用する大腸菌を変更するなどの調整が必要である。一方、すでに報告されているC型菌Stockholm株の培養液中のプロテアーゼの精製法を基に、C-Yoichi株の培養液中からプロテアーゼの精製を試みた。本実験は、途中過程であり、今後、精製法の確立を進める必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一次構造変化を有するHA-33の調製のための組換え大腸菌の変異体作成、ならびに、HA-33のC末端欠落に関与する酵素の精製法について、概ね確立しており、順調に進展しているものと考える
|
Strategy for Future Research Activity |
変異体タンパク質の合成に関して、今後は、過剰発現の手法を調整し、目的タンパク質の機能性を解明する。一方、HA-33のC末端欠落に関与する酵素の効率的な精製法を調製し、その性状について明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度末に予定していたボツリヌス菌のゲノム配列解析がサンプル調製に間に合わなかったため、来年度にサンプルの解析を行うこととなり、そのための支出として繰り越すことといたしました。
|