2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the increased large genomic regions in Vibrio cholerae epidemic strains
Project/Area Number |
18K07126
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
今村 大輔 法政大学, 生命科学部, 准教授 (70454650)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コレラ / パンデミック / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、コレラ流行株特異的に起こっている大規模なゲノム領域の増加について、その原因や表現型、パンデミックへの影響を明らかにすることを目的として解析を行なった。コレラの流行地域であるインドのコルカタで、コレラ患者から分離したコレラ菌のゲノム解析を行ったところ、一部の株では著しく増加したゲノム領域が見られた。しかし、その増加様式やメカニズムに関する知見は得られなかった。そこで、完全ゲノム配列を構築したところ、ゲノム領域の大規模な重複などは起こっていなかった。また、増加の見られた0.4 Mbに渡る領域が環状化していることが明らかになったが、この領域の切り出しは起こっていなかった。そのため、コレラ菌のコレラ毒素をコードしているCTXΦファージの複製メカニズムであるRolling Circle Replication (RCR)による可能性が考えられた。RCRでは、ファージゲノムの切り出しは起こらずに、ニックの入った部位から複製される。増加ゲノム領域の環状化部位からも、RCRのニック部位のモチーフ配列が見つかった。これらの結果から、コレラ流行株の一部では、RCRによって染色体の大規模な領域が増加していることが示唆された。そこで、さらに5株の完全ゲノム配列を構築したところ、近年の流行株はいずれも、CTXΦ領域の構造がパンデミック初期の流行株とは異なっていることを発見した。さらに、これによりプロファージゲノムを複製することができなくなっていた。以上の結果より、近年のコレラ流行株では、RCRによって頻繁に染色体領域の増加が起こっていること、そして、CTXΦファージを放出できなくなっていることが示唆された。この現象はコレラ流行株の遺伝子組成を大きく変化させ、また、パンデミックの伝播様式を変えるものであるため、病原性やパンデミックの継続に対して大きな影響を与えているものと考えられた。
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