2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07129
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
竹原 正也 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (40742705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永浜 政博 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40164462)
小林 敬子 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90170315)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細菌毒素 / 自然免疫 / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウエルシュ菌はガス壊疽の原因菌の一つであり、短時間で好中球減少症を介した敗血症を引き起こし、抗菌薬の投与でコントロールできない極めて予後の悪い感染症を引き起こす。最近、我々は、ウエルシュ菌に感染したガス壊疽モデルマウスを用いた検討により、本菌に感染した宿主では好中球の分化が抑制され、宿主の自然免疫機能が低下することを発見した。このような作用は、本菌による感染症の急速な進行に関与すると考えられる。そこで、本研究では、ガス壊疽モデルマウスを用いて、本菌が好中球の産生に与える詳細な検討を行った。はじめに、ウエルシュ菌感染マウスで、好中球の分化や増殖を促進する顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の産生を定量すると、予想に反し、本菌の感染により生体内でG-CSFが過剰に産生されることが判明した。また、このようなG-CSFの産生亢進作用は、α毒素遺伝子を欠損した変異型のウエルシュ菌ではほとんど観察されず、本菌より産生されたα毒素が、G-CSFの産生を亢進することが判明した。さらに、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いた検討により、α毒素がToll様受容体を過剰に活性化することが分かった。一方、純化した好中球にα毒素を作用させると、G-CSF受容体の発現が低下し、好中球のG-CSFに対する感受性が低下した。これらの結果より、ウエルシュ菌が感染した宿主では、産生されたα毒素が好中球でG-CSF受容体の発現を低下させ、G-CSFを介した好中球の分化や増殖を阻害し、好中球の産生が障害されると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、血管内皮細胞からのG-CSF産生に対するα毒素の影響、G-CSFの好中球増殖促進作用に対するα毒素の影響、G-CSF受容体に対するα毒素の効果について、それぞれ検討することとした。我々は、毒素のこれらのターゲットに注目した検討を計画通り進め、本毒素が血管内皮細胞からのG-CSFの産生を亢進すること、G-CSFの好中球増殖促進作用を抑制すること、G-CSF受容体の発現を減少させることをそれぞれ見出した。このように、本研究は当初の計画にそって、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の検討は以下の方針で行う予定である。 1. ウエルシュ菌感染マウスにリコンビナントG-CSF(rG-CSF)を投与し、本菌の感染に対するrG-CSFの治療効果について検討する。 2. マウスより採取した好中球にα毒素を処理し、発現が変動する遺伝子をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析し、α毒素の作用メカニズムの全体像を明らかにする。 3. DNAマイクロアレイを用いた検討で同定されたα毒素のターゲットをノックダウン、あるいは、ゲノム編集技術によりノックアウトし、これらが本毒素の作用に与える影響を検討する。これにより、α毒素の好中球に対する作用メカニズムを解明する。
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Causes of Carryover |
当初は、2018年3月に旅費の支出を計画していたが、参加を予定していた学術集会の開催時期に変更(2019年3月から2019年4月に変更)があったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、2019年度に旅費として支出し、本研究課題の研究成果を発表する計画である。
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Research Products
(5 results)