2018 Fiscal Year Research-status Report
ウエルシュ菌溶菌酵素の種特異性機構の解明と応用研究
Project/Area Number |
18K07131
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
玉井 栄治 松山大学, 薬学部, 准教授 (40333512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神鳥 成弘 香川大学, 総合生命科学研究センター, 教授 (00262246)
成谷 宏文 広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (30452668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 溶菌酵素 / 種特異性 / 細胞壁 / ウエルシュ菌 / アミダーゼ / グルコサミニダーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
溶菌酵素は、細胞壁を分解し細菌を殺す酵素であり、一般的に触媒ドメインと結合ドメインからなる。また、溶菌酵素には種特異性があり、その特異性は結合ドメインに大きく依存していると考えられている。これまでに、ウエルシュ菌特異的溶菌酵素Psmの種特異性や構造を明らかにしてきたが、その種特異性のメカニズムに関しては不明のままである。本研究は、他のウエルシュ菌特異的溶菌酵素の構造を明らかにし種特異性のメカニズムを明らかにするものである。本年は、ウエルシュ菌のゲノムに存在するCPE1138遺伝子産物の種特異性、ドメイン構造さらには触媒ドメインの構造と触媒メカニズムを明らかにした。CPE1138は、アミノ酸配列よりアミダーゼ活性を持つN末端ドメインと結合に関与するC末端ドメインからなると予想された。そこで、各種欠損変異体を構築し、溶菌活性と結合活性を測定した結果、溶菌活性には1-146番目のアミノ酸、結合には164-305番目のアミノ酸が必要であることがわかった。なお、結合ドメインは、他のタンパク質と相同性を示さないため新規の結合ドメインであることが考えられた。さらに、溶菌酵素の至適条件は、pH6-8,0.2-0.8M NaCl,45℃であり、Mn,Mg,Ca,EDTAの影響は受けなかったが、Znによって溶菌活性が低下することがわかった。また、種特異性を調べた結果、ウエルシュ菌にのみ溶菌活性を示すことがわかった。一方、CPE1138のN末端ドメインの構造を2.0Åの分解能で決定することに成功した。さらに、変異体の解析により、51番目のTryが酸触媒となってペプチド結合を切断するという反応メカニズムを明らかにした。 一方、ウエルシュ菌の溶菌酵素Acpにおいて、フィブロネクチン結合タンパク質の一つであるGAPDHを結合することにより感染への足場となっているのではないかという新機能を発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウエルシュ菌のCPE1138遺伝子をクローニングし、発現および精製系を構築した。さらに、精製されたCPE1138を用いた生化学的解析によりその至適条件や種特異性異性(ウエルシュ菌に特異的に作用する種特異性の高い溶菌酵素であること)を明らかにした。さらに、CPE1138のドメイン構造を明らかにし、N末端ドメインの構造を2.0Åの分解能で決定した。また、変異体を用いた解析によりその反応メカニズムを明らかにした。一方、ウエルシュ菌の他の溶菌酵素Acpに関して感染の足場になるという溶菌酵素Acpの新たな機能を発見することができたことは大きな進展であった。上記の結果から本研究がおおむね順調に進展していると考えられる。なお、Acpに関する新しい機能の発見は、本研究課題の目的とは直接は関係していないのでおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
溶菌酵素CPE1138の全体構造及び結合ドメインの構造を明らかにすることを第一の目的とする。CPE1138は、精製後濃縮段階においてアグリゲーションを起こしていると考えられるため結晶化が困難である。一方、表面の疎水性アミノ酸からなるクラスターを変異により破壊することにより溶解度が変化することが知られている。そこでCPE1138の疎水性アミノ酸を親水性アミノ酸に置換した変異体を作成し、溶解度の向上を行い結晶化スクリーニングを行う。また、溶解度の高い既存のドメイン(GSTやTF)等との融合タンパク質の構築も行い結晶化スクリーニングを行う。 一方、ウエルシュ菌特異的溶菌酵素であるPsmやCPE1138の結合基質の探索を行う。具体的な方法は、ウエルシュ菌細胞壁をPsm、CPE1138、Acpで分解し、HPLCで分画しをGST融合結合ドメインと抗GST抗体を用いて結合活性があるフラクションを検出する。さらに、得られたフラクションを用いてTOF-Massにより結合基質の構造決定をする。得られた結合基質の構造データを用いてin silicoで結合モデルの構築を行う。また、結合モデルのデータより、結合ドメインの各種変異体を構築し、結合活性を測定して、結合モデルの妥当性を検証する。さらに、溶菌酵素と結合基質の共結晶のスクリーニングも平行して行う。
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Causes of Carryover |
3月の人件費の詳細が未定であったため若干の次年度使用額が生じた。試薬等の物品費として使用する。
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Research Products
(5 results)