2019 Fiscal Year Research-status Report
結核菌タンパク質PE_PGRS30のPHB2を介したアポトーシス誘導機構の解析
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18K07134
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
松村 和典 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (70537670)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 結核菌 / マクロファージ / PE_PGRS30 / PHB2 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
結核は、今なお対策が必要な感染症であり、結核菌の病原性解明が求められているが、細胞間伝播の機序は不明な点が多い。PE_PGRSファミリーは、結核菌タンパク質の10%を占めるPE/ PPEファミリーのサブファミリーで、特定の機能を有する共通ドメイン等は報告されておらず、機能が同定されているタンパク質も少ない。我々は、結核菌タンパク質PE_PGRS30をマクロファージ様細胞株RAW264.7に発現させると、アポトーシスが誘導されることを見出した。PE_PGRS30は、遺伝子発現やミトコンドリア維持に関与するプロヒビチン2(PHB2)と相互作用していた。PHB2は、核やミトコンドリアに局在し、細胞周期やミトコンドリアの構造・品質維持に関与するタンパク質として知られている。核内では、PHB2は転写因子として機能し、ミトコンドリアでは、PHBと二量体を形成し、ミトコンドリアに局在するGTPaseであるOPA1の長さを長い状態に保つ機能を有する。OPA1が切断されて短くなるとアポトーシスが誘導される。大腸菌に、PE_PGRS30のPGRS領域だけ(PGRS30)を発現させ、精製したPGRS30をマクロファージ添加したところ、PGRS30は細胞質内でPHB2と共局在した。さらに、細胞質内PHB2量が微増するのに対し、核内PHB2量が減少し、OPA1の長さが短くなる傾向を見出した。このことから、PGRS30は、PHB2と結合して細胞質に留め、その機能を阻害する可能性が示唆された。また、PE_PGRS30のC末端から100アミノ酸分の抗原ペプチドを大腸菌で発現、精製し、ウサギに免疫することでPE_PGRS30特異的抗体を回収し、結核菌培養上清中にPE_PGRS30が存在することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、結核菌タンパク質PE_PGRS30が細胞死を誘導する可能性が示唆されていたが、詳細は明らかにされていなかった。現在まで、本研究では、PE_PGRS30の誘導する細胞死はアポトーシスであること、PE_PGRS30がマクロファージ内で標的とする因子が、PHB2であること、マクロファージ内及び試験管内でも、PE_PGRS30とPHB2が結合し、また、それぞれの相互作用領域を示唆する結果を得た。本年度は、さらにPE_PGRS30のPGRS領域を組換えタンパク質で作製し、マクロファージに添加することで、PHB2の核から細胞質への移動がみられ、かつ、OPA1の長さが短くなることも確認でき、より詳細な機構を明らかにしつつある。また、PE_PGRS30に特異的な抗体を作製することで、PE_PGRS30が結核菌培養上清中にも存在することを示すことができ、分泌されている可能性も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
・p53の活性測定 PE_PGRS30をマクロファージに発現させて、p53活性化依存的に発現上昇するp21やBaxの発現をウェスタンブロットやqPCRで確認し、PE_OGRS30の発現によりp53が活性化するか明らかにする。 ・結核菌感染細胞のアポトーシス誘導 PE_PGRS30欠損結核菌をマクロファージに感染させ、野生株と比較してアポトーシス誘導が減少するか検討し、PE_PGRS30が結核菌感染マクロファージのアポトーシスを誘導することを明らかにする。また、PHB2ノックダウンマクロファージに結核菌を感染させアポトーシス誘導が減少するか検討し、PHB2が結核菌感染マクロファージのアポトーシスに寄与していることを明らかにする。 ・結核菌から分泌されたPE_PGRS30の感染細胞内局在 PE_PGRS30は、結核菌から分泌されることが確認できている。結核菌をマクロファージに感染させて免疫染色によりPE_PGRS30の検出を試み、分泌されたPE_PGRS30の感染細胞内局在を明らかにする。PHB2と共局在しているかどうか、PHB2が核またはミトコンドリアに局在するかどうかも検討し、PE_PGRS30を発現させた結果と整合性がとれるか確認する。 ・PE_PGRS30の結核菌病原性への寄与及びPHB2の宿主抗結核免疫への寄与:PE_PGRS30欠損結核菌のマウス感染実験(生死観察、肺の生菌数測定)により、PE_PGRS30の結核菌病原性への寄与を明らかにする。また、肺の組織染色からPE_PGRS30のアポトーシス誘導への寄与を明らかにする。さらに、PHB2ノックアウトマウスは胎生致死のため、PHB2コンディショナルノックアウトマウスを作出し、結核菌感染実験(生死、肺の生菌数測定、肺切片組織染色)により、PHB2の宿主抗結核免疫への寄与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
年度途中に所属する研究室の閉鎖が決まるかどうかという状況が出来し、所属研究室の研究テーマへのエフォートを増やす必要があり、本研究の研究計画を必要最小限の内容で進めざるを得なかったため。しかも、結果的に研究室閉鎖が決定し、本研究の中断も危惧された。幸いにも異動先があり、設備も研究計画の遂行に支障は無い。これまでセーブしていた分も含め、最大限のエフォートで研究計画を完遂したい。
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