2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Inhibitors for Influenza Endonuclease Activity
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18K07138
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星野 忠次 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (90257220)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / エンドヌクレアーゼ活性 / 阻害薬物 / 化合物合成 / X線共結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼに内包されているエンドヌクレアーゼ活性部位を標的として、インフルエンザ治療薬候補化合物の開発を進めた。準備研究の段階で、化合物スクリーニングにより、3種類の阻害物質を同定し、いずれもウイルスの増殖を抑えること、このうちの2つにはほとんど細胞毒性が認められないという知見を得ていた。またエンドヌクレアーゼ活性部位との共結晶構造解析に成功し、化合物の構造改変への指針を得ていた。3つの化合物のうち、細胞毒性の低い2つには共通してピロガロールと呼ばれる骨格構造が含まれていたので、ピロガロール骨格を持つ化合物について合成を進めた。結晶構造解析の結果に基づいて、幾つかの変換構造を考案した。化合物と活性部位との結合親和性を計算機上で結合スコアーとして算出し、算出したスコアー値を参考に合成する化合物構造を決定した。化合物合成を行うと、ピロガロール骨格への修飾が合成条件によって困難な場合があることが判明した。従って、合成できる化学構造は制限されたが。それでも合成した化合物の中に、最初に同定した化合物よりも阻害活性の高いものが見出された。ピロガロールを含む化学構造について、有機合成における反応条件を探索した結果、目的とした化合物の骨格構造が比較的容易に得られる合成経路を見つけることができた。また合成して得られた化合物について、X線共結晶構造解析を進めた。新規の化合物を混合してタンパク質結晶を成長させると、化合物の種類により結晶が不安定になる傾向が見られたが、一つの化合物については、十分な分解能で回折像が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
準備研究で同定した化合物に比べ、活性の向上した化合物を得ることができたため。さらに合成の難しいピロガロール骨格を持つ化合物について、合成の進行しやすい反応経路を見つけることができ、幅広い種類の類縁体を合成できる見込みを得たため。共結晶構造解析に向けて、エンドヌクレアーゼ活性部位を抜き出した部分タンパク質で結晶を得る作業も、計画通り進めることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
阻害候補化合物の合成では、ピロガロール骨格以外の部分構造を合成し、最後にルイス酸を用いて、フリーデル・クラフツ反応でピロガロールに縮合させる方法が有効である。縮合させる部分構造自体がフリーデル・クラフツ反応を起こさないように構造を設計しておくことで、比較的広い種類の化学構造を作成できる。特に化合物とタンパク質の結晶構造をもとに考案した化合物構造の合成を進める。結晶構造解析と計算機解析を組み合わせることで、確実に阻害活性の向上した化合物を得ることができる。 標的タンパク質のエンドヌクレアーゼ酵素活性は、RNAだけでは無く1本鎖DNAも切断するので、1本鎖DNAを基質として使用する。20塩基程の1本鎖DNAの一方の末端に蛍光物質(FAM)を、もう一方の末端に光吸収物質(BHQ)を結合させたプローブを使用して、酵素活性によるプローブDNAの切断を観察することで、より正確な酵素阻害活性の測定が可能である。異なる濃度の化合物存在下で、プローブ切断酵素反応の速度をプレートリーダーで測定することで、化合物の阻害能(IC50値)を求める。 結晶構造解析については、RNAポリメラーゼのドメインAのN末側の200残基弱のエンドヌクレアーゼ部位を部分タンパク質として発現して精製する。タンパク質結晶を、化合物の結合していないアポ体として作出し、後からソーキングの手法で化合物との共結晶を調整する。X線回折実験は、シンクロトロン放射光を用いて行う。 さらに研究協力者の順天堂大学の山本典生博士に依頼して、合成化合物の存在下で、インフルエンザウイルスが他の細胞へ感染する能力を定量化する。タンパク質レベルの阻害活性は、H1N1型のインフルエンザウイルスのアミノ配列を持つ組み換えタンパク質で測定している。そこで初めにH1N1型のウイルス株で化合物の感染阻害の活性測定を行う。
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