2018 Fiscal Year Research-status Report
インフルエンザウイルスNA蛋白質の抗原性変化におけるADCC依存性防御抗体の役割
Project/Area Number |
18K07141
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山吉 誠也 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (50529534)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | インフルエンザウイルス / NA / 抗体 / ヒト / ADCC |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ(NA)蛋白質に対する抗体の機能解析は、NA蛋白質の酵素活性部位周辺を認識し、その酵素活性を阻害する活性(Neuraminidase inhibition; NI活性)をもつ抗体について行われてきた。NI活性をもつ抗体による感染阻害から逃れるために、NA蛋白質の活性部位周辺にはアミノ酸変異が生じている。しかしながら、活性部位から離れた「側面領域」にもアミノ酸変異が高度に蓄積された領域がある。この領域にアミノ酸変異が生じる理由は不明であった。 本研究では、インフルエンザウイルス感染患者からNA蛋白質に対するモノクローナル抗体を7種類作製し、それらの性状解析を行った。まず、抗体の認識部位を同定するため、さまざまな分離株に対する反応性をもとに変異ウイルスを作製し、抗体の結合性を検証したところ、NA側面のアミノ酸変異により抗体の結合が消失した。このことから、本研究の抗体がNA蛋白質の側面部位を認識していることが分かった。次に、NI活性を持つかどうかと、マウスを致死的なウイルス感染から防御できるかどうかを検証した結果、一部の抗体はNI活性を示さなかったものの、Fc受容体を介した免疫細胞の活性化によりウイルス感染からマウスを防御できることが明らかとなった。また、感染患者の血清を調べることで、NA側面部位に対する抗体が感染により誘導されること、およびNA蛋白質側面の抗原性が変化していることも明らかにした。 以上の結果から、NA蛋白質の側面領域を認識し、NI活性を持たない抗体も免疫細胞を活性化することで生体での感染を防御することがわかった。また、NA蛋白質側面のアミノ酸変異の蓄積も感染防御活性を持つ抗体の選択圧により引き起こされていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた解析は全て順調に完了した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回解析を完了したNA蛋白質を認識するヒトモノクローナル抗体の他に、NA蛋白質を認識するヒトモノクローナル抗体を数種類得ている。それらの抗体を解析することで、NA蛋白質を認識するヒト抗体の性状をより詳しく理解していきたい。
|
Research Products
(6 results)