2018 Fiscal Year Research-status Report
ビトロ実験とビボ実験の統合的理解によるEBウイルス関連上皮性腫瘍形成過程の解明
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18K07148
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
吉山 裕規 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (10253147)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | EBV / 口腔扁平上皮癌 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景と目的】 口腔扁平上皮癌の形成に、口腔扁平上皮細胞にEBVが感染し、感染細胞を腫瘍化する可能性が考えられたため、実験を行い確認することにした。
【方法と結果】表皮重層扁平上皮由来のHSC細胞(高分化型)と舌重層扁平上皮由来のSCC細胞(低分化)に、GFP遺伝子をゲノムに組み込んだAkata-EBVを感染させた。そしてEBV+ HSC細胞とEBV+ SCC細胞の潜伏持続感染細胞を作成した。細胞中のEBVゲノム数は、EBV+ HSC細胞は2個で、EBV+ SCC細胞は5個だった。EBV+ HSC細胞は、一部の細胞が自然溶解増殖感染に陥りEBVを放出したが、EBV+ SCC細胞はEBVを放出しなかった。さらに、TPA+Sodium butyrateを用いてウイルスの増殖活性化を試みた。EBV+ HSC細胞では転写因子(BZLF1)の発現誘導が認められたが、EBV+ SCC細胞では認められず、abortive infectionを示した。また、EBV+ HSC細胞は非感染のHSC1細胞に比べ、細胞増殖性と細胞遊走性が亢進した。一方、EBV+ SCC細胞はFibronectinなどの中胚葉マーカーが高発現した。
【考察】 これらの結果から、EBV は口腔扁平上皮に持続感染できると考えられた。しかし、細胞の、増殖性変化やウイルス増殖性は、細胞中のEBVゲノム数よりも細胞分化の違いに影響されると考えられた。また、EBVの唾液を介する伝播様式において、口腔扁平上皮への感染が一定の役割を果たすと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) GFP遺伝子をゲノムに組み込んだAkata-EBVを使用したため、細胞への感染成立を早期に感度よく検出することができた。 2) また、この組換えEBVはGFPに加え薬剤選択マーカーとしてネオマイシン耐性遺伝子もウイルスゲノムに組み込んであり、感染細胞のみを選択的に分離することができた。 3) 最後に、共同研究により、口腔扁平上皮細胞を5種類提供いただき、いくつもの細胞を使用できた。 4) APOBEC3遺伝子を正に制御する調節遺伝子の研究は継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
予想よりも早く感染細胞の確率ができたので、なるべく早い時期に論文を一つまとめたいと考え、不足しているデーターを補う実験を行っている。2019年度中には投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
国際ヘルペスウイルス学会に参加し成果を発表することにしたが、当初の予定では2019年度の旅費が不足すると考えられたため。
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