2018 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイドへのヒトノロウイルス侵入メカニズムと胆汁の役割の解明
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18K07153
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
村上 耕介 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60586973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ノロウイルス / オルガノイド / 胆汁 / 感染メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトノロウイルスは大規模集団食中毒を引き起こすウイルスとして認識されている。しかし、近年まで安定的なin vitro培養系がなかったことから感染メカニズムに不明な点が多く、特にウイルスの細胞侵入に関する知見は非常に少ない。本研究課題では、HuNoVの細胞侵入メカニズムを明らかにすることを目的として、ヒト小腸幹細胞由来オルガノイドへの感染に胆汁を必要とするGII.3 HuNoVを用いた研究を展開する。初年度は(1) GII.3 HuNoVのオルガノイドへの感染に関与する胆汁成分の同定、及び(2)同定した胆汁成分のウイルス感染時における役割の解析を行った。 (1)GII.3 HuNoV感染に関与する胆汁成分の同定:これまでの研究から、候補分子はヒト、ブタ及びウシに共通しており、98℃で10分間の加熱、24時間のトリプシン消化に影響されない分子であることが予想されていた。そこで胆汁主成分である胆汁酸を候補分子とし、13種類の各種胆汁酸をGII.3 HuNoV感染時に培地に添加し、ウイルス増殖をリアルタイムPCRで評価した。その結果、検討した胆汁酸のうちの大半でウイルス増殖が認められた。さらにウイルス増殖量が胆汁酸の疎水度と有意に相関することを見出した。 (2)同定した胆汁成分のウイルス感染時における役割の解析:胆汁酸の界面活性剤としての機能がウイルス感染に関与している可能性を考え、イオン性、非イオン性及び両性界面活性剤を培地に添加したが、ウイルス増殖は認められなかった。次に胆汁酸の生理活性分子としての機能を評価するため、典型的な胆汁酸レセプターであるファルネソイドX受容体 (FXR) 及びGタンパク質結合受容体 (TGR5) の関与を、各受容体に特異的なアゴニストやアンタゴニストを用いて評価したところ、GII.3 HuNoV感染はこれらの受容体に非依存的であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標として掲げていた2つの項目のうち「胆汁成分の同定」については、胆汁酸がGII.3 HuNoV感染に関与していることを明らかにした。一方で「胆汁成分の機能」については、一般的に知られていない胆汁酸受容体がGII.3 HuNoV感染に関与していることを示唆した。
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Strategy for Future Research Activity |
HuNoVと同じカリシウイルス科に属する他のウイルスの先行研究も参考にしつつ、胆汁酸の機能解析を進めていく。特に、本年度に明らかにした「HuNoV増殖量と胆汁酸疎水度」を切り口として、関連するメカニズムを解析する予定である。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったもの、また納期の遅れにより納入が年度内に間に合わなかったものがあるため。当該支出分については次年度の実支出額に計上予定である。また、オルガノイド培養培地に関する試薬の最適化を行なった結果、コスト削減に成功したことも次年度使用額が生じた一因となった。次年度、培養培地に充てる予定であった予算については胆汁酸の機能解析に用いる阻害剤等の購入に充てる。
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Research Products
(4 results)