2019 Fiscal Year Research-status Report
オルガノイドへのヒトノロウイルス侵入メカニズムと胆汁の役割の解明
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18K07153
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
村上 耕介 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 主任研究官 (60586973)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ノロウイルス / オルガノイド / 胆汁酸 / 感染メカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
オルガノイド(HIO)への感染時に胆汁を必要とするGII.3の感染メカニズムを解析し、胆汁酸(グリコケノデオキシコール酸、GCDCA)により誘導される複数の細胞活動をGII.3が細胞侵入に利用していることを明らかにした。 1) FM1-43FX染色したHIOを共焦点顕微鏡で観察したところ、GCDCA存在下でエンドサイトーシスの有意な増加が見られた。またスフィンゴシン-1-リン酸受容体S1PR2の阻害剤がエンドサイトーシス、さらにGII.3増殖を抑制した。これらの結果から、GCDCAにより誘導されるS1PR2介在エンドサイトーシスを利用してGII.3は細胞に侵入していることが示された。2) Lysotracker染色したHIOを観察したところ、GCDCAによりエンドソーム酸性化が誘導された。またプロトンポンプ阻害剤がエンドソーム酸性化およびGII.3増殖を抑制した。さらにリソソームに局在する酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)もGII.3の細胞侵入に関与することを示された。これらの結果から、GII.3は、GCDCAにより誘導されるエンドソーム酸性化およびASM活性を利用して細胞に侵入することが示された。3) ASMはスフィンゴミエリンからセラミドを合成する酵素であることから、GCDCA存在下のHIOにおけるセラミドを観察したところ、腸内腔側細胞膜に多量のセラミドが検出された。また、HIO内のリソソーム局在タンパク質LAMP1を共焦点顕微鏡で観察したところ、GCDCA存在下ではシグナル強度が低下した。また、リソソームのエキソサイトーシス阻害剤がGII.3増殖を抑制したことから、GCDCAによりリソソームのエキソサイトーシスが誘導され、その結果として腸内腔側に分泌されたASMがセラミドを合成すること、そしてその細胞活動をGII.3が利用していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標として掲げていた2つの項目のうち「胆汁成分の同定」に関して、胆汁酸のみならずセラミドも関与していることを明らかにできた。また「胆汁成分の機能」については、急速に研究が進み、胆汁酸が複数の細胞活動を変化させること、さらにGII.3がそれらの活動を利用して細胞侵入することを示すことができた。これらの研究成果を論文として投稿し、PNASにて掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、GII.3の細胞侵入にS1PR2介在エンドサイトーシスが関与していることが示されたことから、より具体的なメカニズムを明らかにしていく。詳細なメカニズムが明らかにされることで、未だ見つかっていないHuNoV感染受容体の同定も期待される。 検体の入手状況にもよるが、他の遺伝子型のHuNoVの感染メカニズムについても解析し、HuNoV全体における一般性を検証する。この検証により、pan-genogroup/genotypeに効果を発揮する阻害剤・予防剤の開発に寄与する知見を得られる可能性がある。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言発令のため、研究業務の停止が所の方針として示されたことにより、本来予定していた実験を実施できなくなったため。次年度使用額は、物品費に充ててオルガノイドの培養に係る試薬に使用する。
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