2018 Fiscal Year Research-status Report
サル免疫不全ウイルス中和抗体誘導における単一B細胞の動態解析
Project/Area Number |
18K07157
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
山本 浩之 国立感染症研究所, エイズ研究センター, グループ長 (80574615)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | HIV / SIV / 中和抗体 / B細胞 / エイズ / 持続感染ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、サル免疫不全ウイルス(SIV)感染、またウイルス特異的中和抗体誘導時における単一B細胞の動態解析を精確に行うことを目標に、まずEnv(エンベロープ)可変領域変異SIVmac239(20種類)の作製を完了した。これらを標的ウイルスとして用いたウイルスキリング型のパネル中和アッセイをSIVmac239感染サル(中和抗体誘導、非誘導)の各数頭につき行い、それによりウイルス中和の標的特異性を検討した。途中、ウイルスの由来細胞によりアッセイの検出域が変化することを把握したのを踏まえ、アッセイ系の改良を行った。結果、Env V1, V4領域に対するEnv変異は調べた全頭につき中和抗体エスケープ変異体であることが見出された。これに対して、V2, V5領域Env変異体は中和エスケープである場合とそうでない場合に分かれ、ポリクローナルと想定される各頭における中和抗体応答でも標的特異性につき複数のパターンが存在することが見出された。また、同じV4領域でも点変異体とループ欠失変異体とでは、中和標的性が異なる場合が認められた。これに対し、中和抗体非誘導群ではEnv変異ウイルス群に対する中和能を高度に示すなど、標的領域の明確な遷移にともなう野生株の中和能喪失が生じたケースは認められず、SIVの中和抵抗性が非常に高度なものである可能性が示唆された。以上の結果は、これまでに報告されていなかった、高度抗体抵抗性免疫不全ウイルスに対する中和抗体応答の特異性につき新たな特徴を見出す重要な結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究の三つの中心的な要素のうち一つであるSIV特異的中和抗体の標的特異性につき重要な基礎的知見が得られたため、おおむね順調に推移していると考えられる。大規模なEnv変異体の系統作製を行い、感染性ウイルス粒子を用いて中和特異性を評価した研究は本研究が初めてである。検出感度域の調整に追加的に検討期間を有したが、引き続く解析系に対して精確性を担保できたことから、全体としての進捗に支障は出なかったものと解釈される。これまで当該研究に関連した知見としては、特定の1-2頭のSIV感染個体におけるEnv点変異体への中和プロファイル、ないし単離抗体の性状解析が報告されたに留まっているが、次年度以降に行う特異的B細胞応答の解析と共役する形で本年度の結果が得られたことはこれらと比べて新規性は非常に高く、有意義である。この結果を踏まえ、次年度以降に単離する特異的B細胞集団の検出プローブなどを改良することができる点が、今後の拡張性の基盤となるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
Env特異的形質芽球(PB)の染色パネル確立を行う。即ち、フローサイトメーターを用いEnv特異的PB集団の精確なゲーティングを確立する。そのために、サル免疫細胞の精確な定義、B細胞終分化をよく反映した分子発現パネルの作成、SIV Env特異的IgG陽性集団の特異度の高い標識 を重視する。本段階に基づき、SIV Env特異的B細胞応答におけるB細胞受容体クローナリティ解析を行う。即ち、Env特異的B細胞集団のフローサイトメーターによるソーティングを行い、全集団及び追加の単細胞ソーティングを経由したB細胞受容体のcDNAライブラリを作製し、IGHVの系統解析を行う。「どのBCR配列がSIV特異的中和抗体誘導群中で高率に見られるか」 という観点に加え、「病態による使用BCRレパトワの乱雑な広汎化(拡張)がNAb誘導で抑制されるのか、あるいはウイルス特異的BCRの種類がむしろ増えているのか」「個々のBCRの変異蓄積は他のウイルス感染と比してどの水準か、レベルはBCRの種類の数と相関があるのか」などを重視して解析する。
|
Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成31年4月1日以降となったため。 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定であるが、平成30年度分についてはほぼ使用済みである。
|
Research Products
(6 results)