2019 Fiscal Year Research-status Report
サーファクタントプロテインDを介した腸内細菌叢制御による胆嚢・消化管の恒常性維持
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18K07166
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
西尾 純子 東邦大学, 医学部, 准教授(寄付講座) (40598679)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SP-D / 原発性硬化性胆管炎 / 線維化 / IL-22 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「胆嚢上皮細胞から分泌されるサーファクタントプロテインD(SP-D)が、どのような機構で腸管や胆嚢の恒常性や疾患に関与するのかを明らかにすること、及び、腸内細菌叢を制御する胆嚢由来分子を探索すること」を目的としている。具体的には、1) SP-Dによって制御された腸内細菌叢のどのような因子が、どのように腸管恒常性維持に貢献するのか、2) SP-Dは胆嚢の恒常性や疾患へ関与するか、3) SP-Dが炎症性腸疾患 (IBD) や関連する胆嚢疾患の治療標的になるか、4)腸内細菌叢を制御する胆嚢由来分子はSP-D以外にも存在するか、の4項目を研究計画とした。1)について、SP-D遺伝子欠損(SP-D KO)マウスでは大腸粘膜固有層のIL-22産生細胞が減少した結果、IL-22産生が低下していることが明らかになり、SP-D KOマウスの大腸悪化の原因と考えられた。2)について、胆嚢で産生されるSP-Dが原発性硬化性胆管炎(PSC)に関与しているかを検討するため、PSCのモデルマウスであるAbcb4遺伝子欠損(Abcb4 KO)マウスとSP-D KOマウスとを掛け合わせた重欠損マウスを作製したところ、SP-Dを欠損により硬化性胆管炎が抑制されることがわかった。また、4)について、大腸炎により産生亢進する胆嚢SP-Dと類似の抗菌分子として、複数の抗菌分子の発現上昇を認めた。 今後は、SP-D KOマウスの糞便メタボローム解析行い、IL-22産生細胞の分化に関与する細菌代謝産物を検討する。また、SP-D欠損によりAbcb4 KOマウスの硬化性胆管炎が抑制されることから、SP-D欠損によるAbcb4 KOマウスの胆管周囲の細胞浸潤の変化や、胆管上皮細胞の変化(活性化や、アポトーシス、老化)について検討を行うことにより、硬化性胆管炎が抑制される分子機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) SP-Dによって制御された腸内細菌叢のどのような因子が、どのような分子機構で腸管恒常性維持に貢献するのかを検討した結果、SP-D遺伝子欠損(SP-D KO)マウスでは野生型(WT)マウスに比較して大腸におけるIL-22の発現が有意に低下していることが明らかになった。大腸におけるIL-22産生細胞を検討したところ、γδT細胞、NKp46細胞、CD4+ Lymphoid tissue-iuducer細胞が、SP-D KOマウスで有意にに減少していた一方、Th17細胞は変化がなかった。また、大腸上皮のバリア機能を検討するため網羅的遺伝子解析を行ったが、SP-D KOマウスとWTマウスの間で明らかな違いを見出さなかった。2) のSP-Dの胆嚢の恒常性や疾患への関与についての検討では、自己免疫性の胆嚢疾患である原発性硬化性胆管炎(PSC)への影響を検討するため、SP-D KOマウスをPSCのモデルであるAbcb4遺伝子欠損(Abcb4 KO)マウスと掛け合わせて重欠損マウスを作製した。硬化性胆管炎の進行につい検討したところ、SP-Dを欠損により病態が抑制されることが明らかになった。4)の腸内細菌叢を制御する胆嚢由来分子を探索するため、胆嚢のRNA-seq解析を行い、Lipocalin2, Lipocalin6, PepsinogenC, S100a6, S100a10などの抗菌分子の発現が上昇していることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、SP-D欠損による腸内細菌叢のdysbiosisにより、大腸におけるγδT細胞、NKp46細胞、CD4+ Lymphoid tissue-iuducer細胞が減少することにより、IL-22の産生低下が原因となり大腸炎感受性が高くなることがわかってきた。腸管粘膜でのIL-22産生には、転写因子Ahrが関与していることがわかっており、そのリガンドとして既知のものも含めて様々な細菌代謝物質がAhrのリガンドとして転写活性を増強させている。SP-D欠損によるdysbiosisにおいてどのような分子機構が、大腸IL-22産生細胞を減少させるを明らかにするため、SP-D KOマウスと野生型マウスの糞便メタボローム比較解析を行い、上記のIL-22産生細胞の分化に関与する代謝産物を検討する。さらに、SP-D欠損によりAbcb4 KOマウスの硬化性胆管炎が抑制されることが明らかになったことから、SP-D欠損によるAbcb4 KOマウスの胆管周囲の細胞浸潤の変化や、胆管上皮細胞の変化(活性化や、アポトーシス、老化)について検討を行うことにより、どのような分子機構によって硬化性胆管炎が抑制されるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
2019年10月より、東京大学先端科学技術研究センターより東邦大学医学部に異動したため、マウス飼育が一時中断したため、飼育料が発生しなかった。 異動後、ケージ量を増やして飼育しており、次年度は、 試薬および消耗品の購入、解析費用、 論文投稿の費用として使用する予定である。。
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[Journal Article] Identification of U11snRNA as an endogenous agonist of TLR7-mediated immune pathogenesis.2019
Author(s)
Negishi H, Endo N, Nakajima Y, Nishiyama T, Tabunoki Y, Nishio J, Koshiba R, Matsuda A, Matsuki K, Okamura T, Negishi-Koga T, Ichinohe T, Takemura S, Ishiwata H, Iemura SI, Natsume T, Abe T, Kiyonari H, Doi T, Hangai S, Yanai H, Fujio K, Yamamoto K, Taniguchi T.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 116
Pages: 23653-23661
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] The effect of anti‐CX3CL1 monoclonal antibody treatment in arthritis and interstitial lung disease of SKG mice.2019
Author(s)
Satoshi Mizutani, Kanoh Kondo, Syotaro Masuoka, Soichi Yamada, Sei Muraoka, Natsuko Kusunoki, Naoto Ishii, Yoshikazu Kuboi, Toshio Imai, Junko Nishio, Toshihiro Nanki
Organizer
Keystone symposia; FIbrosis and Tissue Repair:From Molecules and Mechanics to Therapeutic Approaches
Int'l Joint Research