2018 Fiscal Year Research-status Report
「リポペプチド」を標的とした、ウイルス感染制御の新戦略
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18K07172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森田 大輔 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (40706173)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MHCクラス1 / ミリスチン酸修飾 / リポペプチド / Nef |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト/サル免疫不全ウイルス(HIV/SIV)に由来するNef蛋白質は宿主細胞の反応系を利用して、脂質による修飾(ミリスチン酸修飾)を受けることで、その免疫抑制蛋白質としての機能を発揮する。研究代表者はサルエイズモデルを用いた独自の免疫解析から、この例のように脂質修飾を受けたウイルス蛋白断片「リポペプチド」がT細胞標的抗原となることを初めて見出した。そして、リポペプチド抗原を結合しT細胞へと提示する責任分子として新しいタイプのMHCクラス1分子「LP1」を免疫学と構造生物学、双方の手法から同定してきた。本研究では、霊長類モデルで得られた基礎解析結果を集約し、これをヒトへと展開し、リポペプチドを標的としたワクチン開発の実現可能性を検証することを目的としている。
本年度はヒトLP1分子候補の選抜を進め、絞り込みを完了した。具体的には、まずMHC分子のアミノ酸配列データベース(The European Bioinformatics Institute)に登録されている1万種類以上に及ぶヒトMHC クラス1分子の中からin silicoスクリーニングによって、リポペプチド提示分子に共通するユニークなアミノ酸を有するアリルを全てピックアップした。次いで、それらのリコンビナントタンパク質を調製し、リポペプチド結合試験を実施した。その結果、高いリポペプチド結合能を有する複数のヒトMHCクラス1分子群を見い出すことに成功した。さらに、特に最も結合能の高かった1分子についてはX線結晶構造解析を行い、その結合様式を明かにした(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ヒトLP1分子候補群の同定までに一年を見込んでいた。一方、当該年度では、ヒトLP1分子候補の選抜に加え、さらにその高解像度X線結晶構造解析まで完了している。さらに、個体レベルでの評価を進めるべく、そのトランスジェニックマウスの作出にも既に着手している。従って、本研究課題は「当初の計画以上に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の計画通り、ヒトLP1分子のトランスジェニックマウスを作出し、リポペプチドワクチンの開発を目指して個体レベルでの免疫解析を推進する。まず、合成リポペプチドによる免疫賦活化について最適な条件を決定するとともに、特異的T細胞を検出するためのLP1四量体を構築する。そして、ウイルスリポペプチドによる免疫賦活化の後に、感染実験へと進み、リポペプチドのワクチンとしての実効性を直接的に検証する。
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Causes of Carryover |
当初はヒトLP1候補分子として、少なくとも50種程度の解析を見込んでいた。これに対して、サルLP1分子の高解像度X線結晶構造解析をベースとした効率的なin silicoスクリーニングを実行したところ、候補分子数をその半分以下にすることが出来たため。 翌年度はマウスモデルを活用した免疫解析を予定している。当該助成金を用いることで、フローサイトメトリーに供する抗体の種類を増やすなど、より詳細な解析が可能となる。
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