2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K07179
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
高江洲 義一 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (60403995)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 吾朗 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30229455)
梅村 正幸 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (90359985)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 結核菌 / 感染症 / マクロファージ / 自然免疫 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌による炎症抑制の分子メカニズムを明らかにするため、結核菌が産生するエフェクタータンパク質zinc metalloprotease 1 (Zmp1) に着目してその作用機序の解明に取り組んでいる。まず、Zmp1の宿主側標的分子を同定するために、Zmp1をbaitとしたyeast two-hybrid screeningを行い、新規のZmp1会合分子としてミトコンドリア電子伝達系Complex Iのサブユニットを分離した(以後、この分子をEssential Regulator of Inflammation in Mitochondria, ERIMと呼ぶ)。自然免疫応答の制御におけるERIMの役割を明らかにするために、CRISPR/Cas9法を用いてERIM遺伝子を破壊したJ774.1マウスマクロファージ細胞株を2クローン樹立し、これらの細胞におけるIL-1bの産生をELISA法で調べたところ、ERIMはNLRP3インフラマソームを介して誘導されるIL-1bの産生に必須であることが明らかとなった。詳しい解析の結果、ERIMはミトコンドリア由来活性酸素種 (mtROS) の産生に必須の役割を果たしており、これによってNLRP3インフラマソームの複合体形成を制御することが示唆された。そこで、Zmp1の作用機序を詳しく調べるために、レンチウイルスベクターを用いてZmp1を安定発現するJ774.1マウスマクロファージ細胞株(J774.1[Zmp1])を樹立し、LPS + ATP刺激によるIL-1bの産生を元株と比較した。その結果、J774.1[Zmp1]とJ774.1元株のIL-1bの産生に有意な差は認められなかった。このことから、Zmp1単独ではIL-1bの産生を抑制することはできず、結核菌の感染時にはZmp1以外の因子が協調して働く可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結核菌が産生するエフェクター分子の一つで炎症抑制作用を持つタンパク質Zmp1の具体的な作用機序は不明である。これを解明するために、昨年度はZmp1と相互作用する宿主タンパク質としてERIMを同定した。さらに、CRISPR/Cas9法を用いた解析により、ERIMはNLRP3インフラマソームの活性化に必須であることを世界に先駆けて見出した。Zmp1の作用機序を詳しく調べるために、レンチウイルスベクターを用いてZmp1を安定発現するJ774.1マウスマクロファージ細胞株(J774.1[Zmp1])を樹立して機能解析を試みたが、IL-1bの産生に対する抑制効果は認められなかった。一方、ウシ型結核菌ワクチン株BCGの野生株とZmp1欠損株をJ774.1細胞に感染させた場合は、Zmp1依存的なIL-1b産生阻害効果が認められた。これらのことから、結核菌/BCG感染においてはZmp1と協調して働く何らかの因子が存在する可能性が考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに得た結果から、「Zmp1はERIMと直接相互作用することにより、ミトコンドリア電子伝達系Complex Iの働きを阻害する」可能性が極めて高いと推察される。これを検証するため、J774.1細胞にBCG野生株またはZmp1欠損株を感染させて、i) Complex Iの活性、ii) Complex Iの形成状態、iii) ミトコンドリア膜電位、iv) mtROSの産生を調べる。また、共同研究者らにより、HEK293T細胞でZmp1を一過的に発現させた場合にミトコンドリア膜電位の低下が認められたことから、この系でも上記4項目を検証する。これらの実験により、Zmp1によるComplex Iの阻害が認められる場合は、プロテアーゼ活性喪失型変異体 (Zmp1-E494A)を用いて同様の解析を行う。さらに、BCG感染細胞において、細胞内在性ERIMとZmp1が共局在する可能性をProximity Ligation Assayや免疫沈降法を用いて調べる。J774.1細胞を用いた感染実験が上手くいかない場合は、ERIMコンディショナルノックアウトマウス(ERIM-flox/flox Lyz2-Cre)より調製した骨髄由来マクロファージを用いてBCG感染実験を行う。
|
Research Products
(6 results)