2020 Fiscal Year Research-status Report
ディープラーニングを活用したT細胞受容体リガンド同定技術の開発
Project/Area Number |
18K07180
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
中津川 宗秀 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70448596)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 細胞受容体 / 構造解析 / ペプチド/抗原提示分子複合体 / 分子モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、T細胞受容体(以下、TCR)遺伝子配列からそのリガンドである抗原ペプチド/抗原提示分子複合体(以下、pHLA)を同定する技術を開発し、患者あるいは健常人のTCRレパトアから認識抗原群を同定し、病気に対して最適な抗原を標的とした個別化治療あるいは個別化予防を実現することである。本研究では、コンピューター上の計算によって、TCR配列情報からそのリガンドである抗原ペプチド/抗原提示分子複合体を同定する技術を開発することを目指す。 これまで既知のTCR/pHLA構造解析データを用いて、様々な組み合わせを用い、ドッキングシミュレーションを行った結果、ある結合条件がTCR認識ペプチド抗原提示分子ペアでは当てはまるが、非認識TCR/pHLAペアでは当てはまらないことがわかった。結合条件の有無をスコア化することで、TCR認識ペプチド抗原提示分子ペアでは、高いスコアを示すことがわかった。 今回さらに、構造未知のTCR/pHLAペアを用いて、それらの配列情報から分子モデリングを行い、予測構造を作成し、ドッキングシミュレーションを行い、in silico結合評価した結果、TCRが認識できるpHLAとのペアでのみ、より高いスコアを示した。このことは、構造データを用いてコンピュータ上でTCRがあるpHLAを認識するかどうかを判別可能であることを示唆している。 本研究では、ディープラーニング技術を利用した解析も行ったが、解析効率がわるいことが判明した。ディープラーニング技術を用いるよりも、網羅的なドッキングシミュレーションを実行することで、より精度の高いTCR/pHLA結合判定が可能となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既知のTCR/pHLA複合体構造解析データを用いて、様々な組み合わせを用い、ドッキングシミュレーションを行った結果、ある結合条件がTCR認識pHLAペアでは当てはまるが、非認識TCR/pHLAペアでは当てはまらないことがわかった。このことは構造データを用いてin silicoでTCRがpHLAを認識するかどうかを判別可能であることを示している。
結合条件の有無をスコア化することで、TCR認識ペプチド抗原提示分子ペアでは、高いスコアを示すことが複数のペアの解析によってわかった。さらに、構造未知のTCR/pHLAペアを用いて、それらの配列情報から分子モデリングを行い、予測構造を作成し、ドッキングシミュレーションを行い、in silico結合評価した結果、TCRが認識できるpHLAとのペアでのみ、より高いスコアを示した。 このことは、構造データを用いてコンピュータ上でTCRがあるpHLAを認識するかどうかを判別可能であることを示唆している。本研究の目標であるコンピュータ上でのTCRのリガンド予測が可能であることを示唆するデータが得られたため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ディープラーニング技術を用いての検討も行ったが、解析効率が上がらず、十分な精度がでないことがわかった。今後網羅的なドッキングシミュレーションでの解析に焦点を絞る。 構造未知の解析するTCR/pHLAのn数を増やすことで、より精度の高い解析が可能となるが、そのためには、分子モデリングソフトウエア上でのマクロプログラムなどを用い構造作成の手間を自動化し、より効率のよい分子構造予測を行う必要がある。 コンピュータ計算能力をさらに強化し、計算時間の短縮を目指す。 分子モデリングソフトウエアを用いて、より最適な構造予測条件を解析する。 複数の構造を予測し、総当たりでTCR/pHLAの結合評価を行い、より精度の高い結合スコアリングシステムの開発を行う。
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Causes of Carryover |
今後、解析を進めていく上で、計算量の増大が予想される。そのため、高性能ワークステーションを追加する必要があり、周辺機器を含めて購入予定。また必要に応じて、分子モデリングソフトウエアの使用ライセンスの更新料も必要となる。また現在の成果について学会や研究会等での発表を状況に応じて行うため、参加費・旅費が必要となる可能性がある。
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