2018 Fiscal Year Research-status Report
D-アミノ酸に着目した腸管粘膜免疫制御とIgA腎症発症メカニズムの解析
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18K07181
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 将貴 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(PD) (90595000)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / IgA / 腸内細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類が利用するアミノ酸は多くはL-型である。一方でバクテリアは様々なD-アミノ酸を合成し、細胞壁の構築やバクテリア間の相互作用に利用している。近年、哺乳類にもD-アミノ酸が存在することが確認されているが、それらはD-セリンやD-アスパラギン酸など一部を除き、腸内細菌に由来すると考えられている。 小腸上皮組織は腸内細菌と相互作用し、食物などの成分と細菌などの成分を選択して認識し、免疫機能を確立している。小腸上皮に発現するD-アミノ酸酸化酵素(DAO)は管腔へと分泌されることで腸内細菌叢をコントロールすることが報告されている。一方で腸内細菌由来のD-アミノ酸が宿主の免疫制御に与える影響は明らかでない。本研究では腸内細菌と宿主の相互作用の一端としてDAOによるD-アミノ酸の代謝に着目し、小腸粘膜免疫にもたらす影響について検討をおこなった。特に小腸粘膜防御の主要なイムノグロブリンであるIgAの産生制御メカニズムにD-アミノ酸代謝がどのように関与するのかについて検討をおこなった。 DAO活性欠損マウスを用いた解析結果からD-アミノ酸の代謝がIgA産生制御に寄与することを発見し、そのメカニズムとしてT 細胞レセプターノックアウトマウスとDAO活性欠損マウスを解析することで、T細胞依存性、非依存性両方の経路がIgAの産生制御に関与することを明らかにした。さらにDAOの活性に影響を受けない腸内細菌を移植することでIgAの産生を抑えることができることを発見し、これらは過剰なIgA産生がきっかけとなる種々のIgA関連疾患の治療法として役立つ可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では本年度内に野生型およびDAO活性欠損マウスの腸内細菌叢の解析と粘膜免疫細胞の解析を行う予定であった。 腸内細菌叢の解析では野生型とDAO活性欠損マウスにおいて細菌の定着時に増殖速度が異なる上、定着した菌叢も異なることを発見した。一方予想外にも、限られた菌叢をもつ環境で飼育したマウスでは野生型とDAO活性欠損のいずれにおいてもIgAの産生促進が起こらないことを発見した。このことは特定の菌種がIgA産生の誘導を引き起こしていることが想定される。 TCRb/d ダブルノックアウトマウスとDAO活性欠損マウスの交配が終わり、粘膜免疫細胞の解析を行うことができた。そこから非常に興味深い結果を得ることができ、IgA産生を担うplasma細胞に到るまでのB細胞の分化にD-アミノ酸代謝が関与している可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出したD-アミノ酸が関与するT細胞依存性/非依存性のIgA産生増加メカニズムに関しては現在論文投稿の準備を行なっている。 DAOは中性および塩基性D-アミノ酸を分解する。DAO活性欠損マウスで認められた変化の要因となるD-アミノ酸がどれなのか、D-アミノ酸のスクリーニングを行う。さらにスクリーニングの結果から、得られたアミノ酸のレセプターの探索を行う。また、D-アミノ酸が直接作用しうる細胞は小腸に存在する細胞のうちどれなのか、粘膜組織から回収した細胞を用いて検討を行う予定である。
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Research Products
(6 results)