2020 Fiscal Year Research-status Report
肺発生と肺がんに共通する遺伝子発現モジュール解析と肺がん治療への応用
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18K07193
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
新美 敦子 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (50508984)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶野 泰祐 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 主任研究員 (50723673)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | POLD4 / EGFR / ゲノム不安定化 / DNA損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
EGFR遺伝子は国内における肺腺がん患者の約半数で変異が検出される代表的なドライバー遺伝子であり、肺がんの発生や悪化に深く関与している。しかし、その変異発生のメカニズムに関してはほとんど明らかとなっていない。近年、DNA複製・修復酵素DNAポリメラーゼδ複合体の最小サブユニットPOLD4がゲノム不安定化抑制を介して肺がんの発生や悪性化を防ぐ働きを持っていることが示唆されている。そこで、POLD4、及びPOLD4と発現相関のある遺伝子群をモジュールとして定義し、各種検討を行ったところ、モジュール活性とEGFR変異との間に何らかの相関関係がある可能性が見出された。本研究ではPOLD4モジュール活性とEGFR変異との因果関係を明らかにし、肺腺がん発生に関わるメカニズムの一端を解明することを目的としている。 1.前年度に引き続き、更なるデータベース解析を遂行した。研究分担者・梶野博士の協力の下、TCGAデータベースを用いてEGFR変異に高頻度で見られる欠失と挿入の複合型変異スペクトラムをRNA-seqの結果からピックアップし、POLD4モジュール活性との間に相関関係が見られるかについて解析した。また、特徴的な変異スペクトラムとPOLD4モジュール活性との関係性について更に詳細な解析を行うため、がん変異シグネチャーを用いたアプローチを試みた。 2.POLD4モジュールに含まれる遺伝子産物がPOLD4と機能的にどのような関係性を持っているのかを調べる目的で、培養細胞を用いてPOLD4抗体による免疫沈降を行い、物理的な相互作用の有無を解析した。モジュール遺伝子産物のほとんどはPOLD4との直接的な相互作用はしていない可能性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではPOLD4モジュール活性とEGFR変異の因果関係について、(1)バイオインフォマティクス手法、及び(2)細胞生物学的手法の2方面より解析を行う予定である。(1)について、前年度にTCGAなどのデータベースを用いてEGFR変異とモジュール活性の相関関係について解析を行ったが、国外のデータセットではEGFR変異があまり多く見られないことなどから、サンプル数が十分とならなかった。そのため、統計学的に有意な結果を得ることができなかった。その後、EGFR遺伝子上の変異に限定せず、EGFR変異に特徴的にみられる変異スペクトラムを対象として解析を行うことでサンプル数に関する問題は解決できたが、そこに至るまでの試行錯誤に時間を費やしてしまい、(2)の細胞生物学的手法による解析を予定通り行うことができなかった。よってやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.EGFR変異に特徴的な変異スペクトラムを用いた解析はほぼ終了しているため、今後はがん変異シグネチャーとPOLD4モジュール活性との関係性に焦点を当てた研究を進め、データベースを用いた解析を完了する予定である。 2.POLD4とPOLD4モジュール遺伝子がどのように機能的に協調してゲノム不安定化を防いでいるのかを調べるため、引き続きPOLD4免疫沈降やモジュール遺伝子を複数ノックダウンした場合における薬剤感受性の変化などについて解析を進め、互いの物理的、機能的相互作用とその意義について明らかにする。
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Causes of Carryover |
データベース解析について、当初の目的とした条件のサンプル数が足りず、問題解決に時間を費やしてしまったために細胞生物学的手法を用いた実験の進行が遅延した。そのため、細胞培養関連試薬やsiRNA、トランスフェクション試薬などの購入の機会が減り、物品費が当初の予定額に達しなかった。今後の使用計画としては、データベース解析についてはほぼ終了したため、遅れていた細胞実験を進める目的で関連試薬の購入に用いる他、論文投稿に向けて英文校正費、論文投稿費に用いる予定である。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] CEBPγ facilitates lamellipodia formation and cancer cell migration through CERS6 upregulation2021
Author(s)
Hanxiao Shi, Atsuko Niimi, Toshiyuki Takeuchi, Kazuya Shiogama, Yasuyoshi Mizutani, Taisuke Kajino, Kenichi Inada, Tetsunari Hase, Takahiro Hatta, Hirofumi Shibata, Takayuki Fukui, Toyofumi Fengshi Chen‐Yoshikawa, Kazuki Nagano, Takashi Murat, Yoshiyuki Kawamoto, Shuta Tomida, Takashi Takahashi, Motoshi Suzuki
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Journal Title
Cancer Science
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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