2018 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1およびBLV感染による腫瘍化の比較解析
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18K07203
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
谷 千賀子 宮崎大学, 医学部, 研究員 (60817047)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森下 和広 宮崎大学, 医学部, 教授 (80260321)
中畑 新吾 宮崎大学, 医学部, 講師 (80437938)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | BLV / EBL / HTLV-1 |
Outline of Annual Research Achievements |
牛の感染症として牛白血病ウイルス (BLV)感染は、未だ全国的な対策が確立されておらず、本邦における家畜牛の約3-4割にもその感染が広がっている。BLV感染は約30%にリンパ球増多症を誘発し、さらに約5%に悪性B細胞性リンパ腫である地方病性牛白血病 (EBL)を引き起こす。BLV感染によるEBL発症機構解明を目的として、本研究ではアンチセンス鎖の転写に着目し、BLVプロウイルスの発現様式を解析した。BLV持続産生羊腎臓細胞株FLK-BLV細胞を用いて、5’- 及び 3’-RACE PCR法にて調べたところ、BLVはスプライス型 (SI)と新規の非スプライス型 (US)のアンチセンスRNAを産生することを同定した。これらの産物は 成人T細胞白血病 (ATL)の原因ウイルスであるHTLV-1のアンチセンス転写産物であり、発がんに重要なHBZの SIとUSに相当するものであったことから、アンチセンス鎖の転写はBLVとHTLV-1で保存されたメカニズムであることが示唆された。しかしながら、CPATを用いたin silicoの解析によりHBZとは異なり、BLVの SIとUSは両者ともタンパク質として機能する可能性が低いことが示唆された。新鮮牛白血病検体を用いたRT-PCR解析から、BLV US およびSI RNAはEBL細胞で発現することを確認した。BLVのセンス鎖の転写は、EBL細胞で不活化されることが知られていることから、BLVアンチセンスRNAは発がん過程において重要な役割を果たしている可能性が推測された。今後、これらの機能解析を進め、BLV感染やがん発症における生理的意義を明らかにする必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンチセンス鎖からのBLVの遺伝子発現様式が明らかになり、BLVの増殖・感染機構の解明において有用な知見となる。さらに、牛の新鮮検体を用いて実証することができたことは、同定したウイルス発現機構がBLVの発がん機構解明に寄与するものと考えられるため、おおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として以下の項目を実施する予定である。 1. 同定したアンチセンスRNAのBLV感染リンパ球の増殖、感染における機能を明らかにする。 2.HTLV-1とBLVのTaxおよびアンチセンスRNAの比較検討。それぞれのウイルス遺伝子の有する宿主細胞の遺伝子、シグナル伝達経路の活性化様式、及び細胞の不死化誘導を比較する。
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Causes of Carryover |
本年度は、ウイルス遺伝子の発現解析を主として行い、次年度に、その機能解析を実施する。そのため、抗体や各種分子生物学的試薬、細胞培養関連の消耗品が必要となり、繰り越し分をこれらに計上する予定である。
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