2018 Fiscal Year Research-status Report
Sav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与の解明
Project/Area Number |
18K07213
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
酒井 伸也 姫路獨協大学, 薬学部, 講師 (30525077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 克志 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (70296565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Hippo経路 / Sav1 / RASSF1A / BioID |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippoがん抑制情報伝達経路において、Sav1はアダプター蛋白質として情報伝達分子の集積に主要な役割を担っている。申請者らは、プロテオミクス解析により、Sav1がHsp60と相互作用する事を明らかにした。本研究では、BioID(proximity-dependent biotin identification、近位依存性ビオチン標識)を用いて、Sav1-Hsp60と相互作用する、新たなミトコンドリア蛋白質複合体の同定、ならびにSav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与を明らかにする事を目的としている。H30年度は、(1)細胞分画法を用いて、内在性Sav1の細胞内局在を生化学的に解析した結果、Sav1蛋白質は細胞質、核など細胞内の各所に局在している可能性が示唆された。(2)ゲノム編集によりSav1遺伝子にタグを挿入し、上記(1)により示唆されたSav1の細胞内局在を免疫組織化学的手法を用いて可視化させ解析を行った。(3) Sav1タンパクおよびその変異体(アミノ末端およびカルボキシル末端の欠損構造)を安定発現させたHEK293細胞を作製し、ウェスタンブロット法を用いて発現を確認した。(4) Ras association domain family 1A (RASSF1A)は、低分子量GTP結合蛋白質Rasのエフェクターとして見出されたがん抑制情報伝達分子である。RASSF1Aは、アミノ末端にDAGドメイン、カルボキシル末端にRBD(Ras-binding domain)、および保存されたSARAHドメインを有したアダプター蛋白質であり、Sav1同様にHippoがん抑制情報伝達経路において情報伝達分子の集積に主要な役割を担っている。申請者らはBioID-Sav1融合蛋白質のみならずBioID-RASSF1A融合蛋白質の発現構築を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞分画法を用いた生化学的解析により内在性Sav1が当初予想されていたより様々な細胞内小器官に局在しうる可能性が示唆された。そのため、当初の実験計画を修正しゲノム編集技術によりSav1遺伝子にタグを挿入した遺伝子改変細胞を作製した。免疫組織化学的手法を用いて細胞内局在を可視化させた所、細胞分画法を用いて得られた結果と同様の結果を見出した。また、当初の実験計画を変更し、Sav1タンパクおよびその変異体(アミノ末端およびカルボキシル末端の欠損構造)を安定発現させたHEK293細胞を作製し、ウェスタンブロット法を用いて発現を確認した。これらの検討および解析におよそ10ヶ月を要したため、研究計画はやや遅れているが、平成30年末より、BioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現するプラスミドを構築し、HEK293細胞に一過性発現させ、局在ならびに発現を確認中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、BioIDを用いて、Sav1-Hsp60と相互作用する、新たなミトコンドリア蛋白質複合体の同定、ならびにSav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与を明らかにする事を目的としている。細胞分画法を用いた生化学的解析の結果から、内在性Sav1が様々な細胞内小器官に局在しうる可能性が示唆されたため、当初の実験計画を修正し、ゲノム編集技術によりSav1にタグを挿入した遺伝子改変細胞を作製し、細胞内局在の解析を行った。これらの検討および解析におよそ10ヶ月を要したため、年度内に当初の研究計画を完了することが困難となった。 今後の研究の推進方策としては、平成30年度に予定していた実験計画も含めて以下のように計画している。(1) 遺伝子導入効率の高いHEK293細胞に、BioID-Sav1融合蛋白質ならびBioID-RASSF1A融合蛋白質を一過性発現させ、ウェスタンブロット法および免疫組織化学的手法により発現を解析する。(2)ゲノム編集技術により、Sav1遺伝子同様にRASSF1A遺伝子にタグを挿入した遺伝子改変細胞を作製し、細胞内局在解析を行う。(3) ゲノム編集技術によりBioID-Sav1融合蛋白質ならびBioID-RASSF1A融合蛋白質を安定発現させたMCF10A細胞を作製し、ビオチン化蛋白質の細胞内局在を解析する。(4)ビオチン化した遺伝子改変MCF10A細胞より単離した各細胞画分を可溶化し、ストレプトアビジンビーズを用いてビオチン化蛋白質を精製する。精製蛋白質は二次元電気泳動、質量分析法により解析・同定する。(5)新たなSav1ならびRASSF1A蛋白質複合体を見出し、その機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
実験計画の修正・変更に伴い、次年度使用額が発生した。研究費の大部分は試薬などの消耗品に使用する予定であり、大型設備備品の購入の予定はない。実験進捗状況によっては、技術補佐員の人件費に充当する場合がある。
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