2019 Fiscal Year Research-status Report
Sav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与の解明
Project/Area Number |
18K07213
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
酒井 伸也 姫路獨協大学, 薬学部, 講師 (30525077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 克志 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (70296565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Hippo経路 / Sav1 / RASSF1A / BioID |
Outline of Annual Research Achievements |
Hippoがん抑制情報伝達経路において、Sav1はアダプター蛋白質として情報伝達分子の集積に主要な役割を担っている。Hippo情報伝達経路の機能異常は、細胞のがん化ならびに転移の過程にも深く関与している。しかし、Hippo情報伝達経路の、多様ながん抑制作用の分子メカニズムについては不明な点も多い。申請者らは、プロテオミクス解析により、Sav1がHsp60と相互作用する事を明らかとした。本研究では、BioID(proximity-dependent biotin identification、近位依存性ビオチン標識)を用いて、Sav1-Hsp60と相互作用する、新たなミトコンドリア蛋白質複合体の同定、ならびにSav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与を明らかとする事を目的としている。R1年度は、(1) BioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現する構築を作製し、HEK293細胞に一過性発現させ、ウェスタンブロッティングで融合蛋白質を検出した。(2) BioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現する構築を作製し、HEK293細胞のゲノム上に相同組換えにより挿入しBioID-Sav1融合蛋白質を発現する細胞を作製した。作製した細胞株についても、ウェスタンブロッティングで融合蛋白質を検出し、免疫組織化学的手法にて可視化させ解析を行った。その結果、融合蛋白質の細胞内局在は、細胞分画法を用いて得られた結果と同様の結果が得られた。また(3) (2)で作製した遺伝子改変HEK293細胞を用いて、蛋白質ビオチン化がSav1に近接した領域で生じている事を確認する目的で蛋白質ビオチン化を行い、プルダウンアッセイによる精製を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請者らは細胞分画法を用いた生化学的解析により内在性Sav1が当初予想されていたより様々な細胞内小器官に局在しうる可能性が示唆されたため、当初の実験計画を修正しBioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現する構築を作製し、HEK293細胞のゲノム上に相同組換えにより挿入しBioID-Sav1融合蛋白質を発現する細胞を作製した。免疫組織化学的手法を用いて細胞内局在を可視化させた所、細胞分画法を用いて得られた結果と同様の結果を見出したが、遺伝子発現誘導後48時間以上経過すると融合蛋白質の凝集が観察された。この結果から、融合蛋白質の発現量・発現時間の違いによって細胞生理学的な機能が変化する可能性があり、今後精査する必要がある。また、平成30年度より、ゲノム編集技術によりSav1遺伝子にタグを挿入させた遺伝子改変細胞について、免疫組織化学的手法を用いて細胞内局在を継続して解析しており、今回新たに詳細な情報が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、BioIDを用いて、Sav1-Hsp60と相互作用する、新たなミトコンドリア蛋白質複合体の同定、ならびにSav1-Hsp60蛋白質複合体の細胞がん化・転移能獲得への関与を明らかとする事を目的としている。昨年度は、当初の実験計画を修正し、ゲノム編集技術によりSav1にタグを挿入させた遺伝子改変細胞を作製し、細胞内局在の解析を行った結果、Sav1が様々な細胞内局在している可能性が示唆された。R1年度は、BioID-Sav1融合蛋白質ならびにBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現する構築を作製し、HEK293細胞のゲノム上に相同組換えにより挿入しBioID-Sav1融合蛋白質を発現する細胞を作製した。これらの安定発現細胞株の樹立におよそ6ヶ月を要したため、年度内に当初の研究計画を完了することが困難となった。 今後の研究の推進方策としては、R1年度に予定していた実験計画も含めて以下のように計画している。(1) BioID-Sav1融合蛋白質ならびBioID-RASSF1A融合蛋白質を発現したHEK293細胞で、蛋白質ビオチン化がSav1に近接した領域で生じる事を確認する。(2) ゲノム編集技術によりBioID-Sav1融合蛋白質ならびBioID-RASSF1A融合蛋白質を安定発現させたMCF10A細胞を作製し、ビオチン化蛋白質の細胞内局在を解析する。(3)ビオチン化した遺伝子改変MCF10A細胞より単離した各細胞画分を可溶化し、ストレプトアビジンビーズを用いてビオチン化蛋白質を精製する。精製蛋白質は二次元電気泳動、質量分析法により解析・同定する。(4)新たなSav1ならびRASSF1A蛋白質複合体を見出し、その機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究費の大部分は試薬などの消耗品に使用する予定であり、大型設備備品の購入の予定はない。実験進捗状況によっては、技術補佐員の人件費に充当する場合がある。
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