2018 Fiscal Year Research-status Report
IDH賦活化による癌悪性化抑制法開発のための基盤研究
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18K07214
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
神吉 けい太 岡山理科大学, 工学部, 准教授 (10516876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 脱分化 / IDH |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、癌の悪性化(浸潤・転移)の原因となる脱分化現象(上皮間葉移行)に対し、エネルギー代謝酵素であるイソクエン酸脱水素酵素(IDH)を標的とした脱分化抑制法を開発するための基盤研究を行っている。 研究代表者はこれまでに、未分化型肝癌細胞では分化型に比べIDHの発現量が低下していることを見出している。脱分化現象のひとつであるTGF-β誘導性上皮間葉移行におけるIDHの発現変化について調べた結果、上皮系から間葉系への形質転換とともにIDH1, 2, 3各サブタイプの発現減少が認められた。またIDH1, 2, 3各サブタイプの強制発現ベクターを構築し、事前にIDHを強制発現させた細胞にEMTを誘導する実験を行った結果、IDH3の強制発現で有意なEMT抑制効果が認められた。研究成果は第25回肝細胞研究会(2018年7月 東京)、第77回日本癌学会学術総会(2018年9月 大阪)で発表した。 脱分化時にIDHが発現抑制されるメカニズムについて研究を進めた。未分化型肝癌細胞および、TGF-βにより上皮間葉移行を起こした肝癌細胞においてヘッジホッグ(HH)シグナル経路の活性化を認めた。HHシグナル経路は細胞増殖、細胞運動性、細胞死抵抗性などの癌悪性形質を促進することが知られる。HHシグナル阻害剤(GANT-61)は間葉系マーカー減少、上皮系マーカー上昇、IDH上昇、細胞増殖抑制、細胞運動性を低下させた。また分化誘導剤として知られるHDAC阻害剤(トリコスタチンA)が未分化細胞にIDHを強く発現誘導させることを見出した。これらの結果からIDHの発現制御に、HHシグナル経路とエピジェネティックな転写制御が関与していることが示唆された。研究成果は第77回日本癌学会学術総会(2018年9月 大阪)で発表し、第26回肝細胞研究会(2019年5月 横浜)で発表予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度において未分化型肝癌細胞および上皮間葉移行による脱分化に際しIDH発現低下が起こることが確かめられ、さらにIDH3強制発現により上皮間葉移行を軽減することができる可能性を示すことができた。現段階ではさらにIDH3ノックダウンにより上皮系マーカーや肝分化マーカーが減少する結果を得ており、IDHの発現減少が脱分化進行に関わることを見出している。またIDH発現を制御するメカニズムについてもヘッジホッグシグナル経路とHDACによるエピジェネティクス制御の関与を示唆する結果を得ており、これらに焦点を当てた研究を今年度に行える状況である。さらに現在までに各IDHの安定導入細胞株樹立に成功し、表現型の解析に進みつつある。進捗状況としては予想以上に進展しており今年度中に複数の論文発表が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
IDHの機能解析について2018年度は一過性強制発現による検証であったが、レンチウイルスベクターによるIDH安定導入肝癌細胞株が樹立できたことで、今年度はより明確な結果が得られると期待される。表現型の解析だけでなく、細胞増殖能、細胞運動能、浸潤能などの悪性形質について検証を進める。細胞内のIDH代謝物であるαケトグルタル酸の定量や、DNAメチル化、ヒストンアセチル化等のエピジェネティック解析を進める。IDHによる脱分化抑制効果が明確に検証された場合には、癌転移モデルをもちいたin vivo実験を予定しており、そのための基礎データを十分に集め、研究計画の最終年度である2020年度につなげる。
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Research Products
(4 results)