2018 Fiscal Year Research-status Report
がん転移過程フォーカスドin vivoスクリーニングによる制御因子の同定と解析
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18K07216
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
竹本 愛 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 基礎研究部, 研究員 (20706494)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん転移に対する治療薬が望まれているが、未だ存在しない。効果的ながん転移抑制法の提案には、転移成立を決定づける制御機構の理解とその機構の抑制標的としての妥当性の検証が欠かせない。転移は多段階かつ多様な過程で制御されるため複雑で、転移成立を決定する制御機構の理解には、転移の各過程を含み、そして区別できる系が必要である。 そこで本研究では、転移初期、中期、後期の過程が機能欠損しているがん細胞株をそれぞれin vivoスクリーニングに利用し、ゲノムワイドなshRNAライブラリーを導入することでがん転移の成立に寄与する因子を探索することとした。スクリーニングで得られた候補因子について、関与する各転移過程における制御機構を解析することで、新規がん転移関連因子の機能解明と抑制標的となり得る機構の提案を目指している。2018年度は、スクリーニングで得られた転移の初期過程に関与する候補因子EMR1(early-step metastasis regulator 1)と中期過程に関与する候補因子MMR1(mid-step metastasis regulator 1)の解析を進めた。EMR1のノックダウン処理および過剰発現による細胞への影響を検討したところ、転移初期に重要な転移能の1つである遊走能・浸潤能の上昇および減少をそれぞれの場合に認めた。次に、転移への寄与を調べる目的で安定的なノックダウンと過剰発現細胞の作製を進めた。一方、MMR1については、一過性のノックダウンによって中期転移過程に重要な血小板凝集能の増加が認められ、血小板凝集誘導に関与する因子の発現が亢進していることを見出した。また、スクリーニングにおける候補因子同定の効率を上げるため、転移できた細胞または転移巣である肺から回収したゲノムからまとめてshRNAコード配列をPCRで増幅し、次世代シーケンサーを用いて網羅的に配列を同定することとし、PCR増幅と精製の検討を進め、ほぼ条件が決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん転移初期・中期過程それぞれに関与する制御因子のスクリーニングで得られた候補因子EMR1、MMR1について各過程に関与する転移能の解析をin vitroで進め、ノックダウンによって影響した転移に関連する性質をそれぞれ特定することができた。よって、おおむね順調に進んでいるとした。ただ、siRNAによって一過性にノックダウンした場合に認められた転移能への効果をvivoで確認するため、安定的なノックダウンや過剰発現細胞を作製しているが、少々苦戦している。EMR1については、細胞の運動能に影響するためかベクター導入後の薬剤セレクション濃度条件が親株と異なっていた。一方、MMR1については、siRNA導入による一過性のノックダウンによって認められた血小板凝集誘導因子の発現亢進が、安定的ノックダウン株にした場合には認められなかった。MMR1は、エピジェネティック制御因子なので様々な因子の発現に影響し、安定株樹立期間に別の経路によってノックダウンの効果が補完された可能性もある。安定的ノックダウン株でなく、誘導型のノックダウンや発現細胞株の樹立に切り替え作製を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き①転移初期・中期過程の制御に関与する候補因子の解析と、新たに②転移後期過程に関与する因子のスクリーニングを行う。それぞれの計画は以下の通りである。 ①EMR1については、安定的なノックダウンと過剰発現細胞株が得られたら、転移における寄与と機能ドメインを明らかにする。EMR1は、その細胞遊離型による血管内皮細胞の運動能亢進も報告されているので、がん細胞自体の運動能だけでなく、血管への作用を介した転移制御の可能性も検討する。MMR1については、エピジェネテック因子としての作用がおよぶ遺伝領域をChIPアッセイなどで解析し、血小板凝集因子の発現制御に関与する経路を含め、新たな転移制御経路の解明に繋げたい。 ②転移後期過程に欠損を示す転移性のマウス大腸がん細胞株を利用した血行性転移モデルを用いたin vivoスクリーニングを行う。まずは、コントロールshRNA導入細胞が肺転移しない条件を細胞数、移植後日数を検討することで決定する。そして、shRNAライブラリー導入で肺に転移した細胞が保持するshRNAコード配列を次世代シーケンサーで網羅的に同定する。さらに、肺転移細胞を培養・再移植し、転移した細胞のshRNAを再び解析し、候補因子の濃縮の有無で転移への寄与を確認する。このスクリーニング系で得られた因子LMR (Late-step metastasis regulator)は、因子に応じてNK活性やシアストレスへの抵抗性、転移巣での生着性・増殖性等への作用を検討し、関与する転移制御機構を特定する。臨床情報を用い、転移と得られた候補因子の発現相関を確認し、相関のあるがん種のヒト細胞株を用いた発現解析も進め、転移抑制標的としての妥当性の評価も行う。
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[Journal Article] Podoplanin: An emerging cancer biomarker and therapeutic target.2018
Author(s)
Krishnan H, Rayes J, Miyashita T, Ishii G, Retzbach EP, Sheehan SA, Takemoto A, Chang YW, Yoneda K, Asai J, Jensen L, Chalise L, Natsume A, Goldberg GS
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Journal Title
Cancer Science
Volume: 109
Pages: 1292-1299
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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