2019 Fiscal Year Research-status Report
SrcによるmicroRNAのエクソソーム内包メカニズムの解明
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18K07221
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
内藤 陽子 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (10553026)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Src / エクソソーム / microRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
Src活性依存的にエクソソームに内包されるmicroRNA群(SrcEXOmiR)のうち、がん関連miRNAに注目し、このSrcEXOmiRの結合因子探索により、miRNAの選択的エクソソーム内包因子の同定を試みる。本年度はまず、miRNAプルダウン/質量分析によって選定された、SrcEXOmiR結合因子のうち5つについて、Srcがん化細胞で遺伝子ノックダウンを行い、エクソソーム内包miRNA量の変動をリアルタイムPCRで調べることで、miRNAのエクソソーム内包化に寄与する因子の探索を行った。その結果、大腸がん細胞でFactor-Aノックダウンを行うと、エクソソーム産生量は変化させないが、エクソソーム内包SrcEXOmiR量が減少することを見出し、SrcEXOmiRの内包化因子としてFactor-Aを同定した。次に、Srcがどの様にFactor-Aの選択的エクソソーム内包化を制御するか解析した。そのために、Srcがん化細胞系および大腸がん細胞Dasatinib処理系を用いて、Src活性化によるFactor-Aの発現量、SrcEXOmiRのエクソソーム内包化や親和性などが変動するかを検証した。その結果、Src活性によってFactor-AのSrcEXOmiR親和性が増加した。一方、Src活性化によってFactor-Aの発現量変化は見られなかった。さらに、Src依存的なエクソソーム産生量の増加に伴い、エクソソーム内包Factor-Aの放出量は増加したが、エクソソーム粒子あたりの内包化量は変動しなかった。今後引き続き検証が必要であるが、今回の結果より、がん化に伴うSrc活性化によって、エクソソーム産生量を増加させ、同時にFactor-AのSrcEXOmiR親和性を上昇させることで、がん化特異的なエクソソームmiRNAであるSrcEXOmiRの放出を促進することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要に記した様に、昨年度に予定した内容について概ね実施あるいは着手することが出来ている。現時点において、今回の成果が、がんエクソソームmiRNAに広く共通の内包因子であるかは未検証であるが、エクソソームへの内包化因子自体がほどんど知られておらず、本研究において見出したFactor-AがSrcEXomiRの内包化因子として作用するという結果は、「なぜがんおいて特定のmiRNAがエクソソームに内包されているのか?」という問に対して、がん特異的miRNAの放出機構の解明に重要な知見となりうる。
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Strategy for Future Research Activity |
Srcがどの様にFactor-Aの選択的エクソソーム内包化を制御するか引続き解析する。Srcがん化細胞系や大腸がん細胞Dasatinib処理系を用い、Src活性がFactor-Aの細胞内局在やタンパク質修飾を制御するか、またその作用によるSrcEXOmiRのエクソソーム内包化への寄与を調べる。さらに、Factor-AによるmiRNAのエクソソーム内包化作用や、その細胞機能への寄与を調べる。つまり、Factor-Aノックダウン細胞とコントロール細胞由来エクソソームに含まれるmiRNAプロファイルを比較して、Factor-Aにより選択的に内包化されるmiRNAを探索し、またこのプロファイルをSrcEXOmiRと比較する。さらに、エクソソームエデュケーションによる形質転換作用が、Factor-Aノックダウンによって変化するかを調べ、Factor-AによるmiRNAの選択的エクソソーム内包化とがん化との関連について検証する。さらに、Src依存的エクソソームの生理作用について、まず、Src依存的に送達されやすい器官があるのかを調べ、Factor-Aのノックダウンにより内包化miRNA群を操作したエクソソームが運ばれた組織にどのように影響するかを解析する。標識エクソソームマーカータンパク質を用いてモニタリングし、エクソソームが送達されやすかった器官の標本を用いて、細胞増殖や血管新生の分子マーカーの組織免疫染色を行い、がん微小環境形成への影響を調べる。また、患者検体を用いた組織免疫染色によってFactor-Aの発現量やチロシンリン酸化レベルを調べ、患者予後との相関を解析する。これらの解析により、Srcによって特定のmiRNAを選択的にエクソソームに内包する因子の同定と、選択的なmiRNA内包メカニズムを解析し、がん化に伴うエクソソームの質の変動とそのがん進展に対する影響を解明する。
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Causes of Carryover |
大きく計画と使用額が異なったものとしては、受託解析費である。受託解析を行う試料に関して、予定していたサンプル数が得られず、その分の費用が未使用となった。その分は、次年度でも解析費用(その他の項目)として使用する予定である。
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