2018 Fiscal Year Research-status Report
Myc誘導性リンパ腫における増悪化機構の統合的解明と制御
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18K07224
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
杉原 英志 筑波大学, 国際産学連携本部, 助教 (50464996)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MYC / 悪性リンパ腫 / BCL2 / 分子標的阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度はMYC誘導性マウスリンパ腫モデルを2種類用いて研究を推進した。まず、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫モデル(MYC-LBL)において特徴的な遺伝子発現を明らかにするため、正常前駆B細胞と比較した網羅的遺伝子発現プロファイリングを実施した。その結果、これまで報告されているMYCの標的遺伝子群の発現が全体的にMYC-LBLにおいて確認された。さらに高発現の遺伝子を絞り込むとこれまで標的として報告されていない興味深い遺伝子がいくつか同定され、MYC-LBLの発症・悪性化に関与する可能性が示唆された。 次に成熟B細胞型リンパ腫モデルを用いて解析を実施した。これまでex vivoにてマウス成熟B細胞にMYC及びBCL2を同時に発現すると両者単独の場合と比べて、長期に生存できることを見出しているが、さらにヒトリンパ腫で高頻度に欠失が報告されているCdkn2a遺伝子が欠損すると、無限に増殖する能力を獲得することを見出した。この細胞を移植するときわめて予後不良なリンパ腫double hit lymphoma(DHL)に類似したリンパ腫を形成した。またこのDHL様細胞は非ホジキンリンパ腫の標準治療薬であるdoxorubicinに対して非常高い耐性を持つことが確認された。そこでDHL様細胞に対して効果的な薬剤を同定するため、分子プロファイリング支援活動より提供された小規模な分子標的薬のスクリーニングを実施したところ、BCL2阻害剤やMYCの下流分子の阻害剤に加え、これまで報告のない分子の阻害剤に高い感受性を示した。この結果からDHL様リンパ腫細胞はMYCによる発がん機構や難治性リンパ腫に対する薬剤スクリーニングに優れたモデル細胞となり得ることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度では当初の計画通り、2種類のMYC誘導性リンパ腫マウスモデルにおいて、MYCの標的候補分子及びリンパ腫発症・悪性化に関与の可能性がある分子を同定することができた。また、DHL様細胞を培養し、阻害剤をスクリーニングするシステムを構築することができたため、今後このシステムを用いてさらに拡大したライブラリーのスクリーニングへと展開させることができた。これらの結果から順調に研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
MYC誘導性リンパ腫マウスモデルにおいて新規に同定したMYC標的候補分子の機能を同定するため、CRISPR-Cas9またはshRNAによる機能抑制実験を実施し、発症機序や生存にいかに関与するのか解析を進める。逆に遺伝子導入による機能活性化実験も実施することで機能解析を深めていく。また、MYC及びBCL2発現により形成されたDHL様モデルにおいては今後、慶應義塾大学保有の既存薬や低分子化合物ライブラリーを加えて規模を拡大した薬剤スクリーニングを実施する。さらにリンパ腫において発症・悪性化機序の一つとして考えられるシチジンデアミナーゼ(APOBECファミリー)の機能抑制実験を実施し、発がんや治療抵抗性獲得機構にどのような影響を及ぼすのか検討を進める。
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Research Products
(6 results)