2019 Fiscal Year Research-status Report
Exploring a molecular mechanism governing the metabolism to repress cancer progression depending on genetic backgrounds
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18K07235
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山本 一男 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70255123)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞サイズ / 代謝 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞サイズ調節遺伝子Largenは、過剰発現させるとミトコンドリアの量と質を高めることで細胞を大きくする。従ってLargenの発現は細胞レベルにおける代謝調節に影響を与えると考えられる。このことから特に生体内での癌の発症と進行における役割について着目し、遺伝的に異なる背景に由来するリンパ腫形成モデルマウスにおける影響を比較・検討することで、癌における代謝の役割を明らかにする研究を計画した。この目的のためにPtenfl/fl Lck-CreマウスとPtenfl/fl Lck-Cre Largen-Tgマウス、およびp53fl/fl Lck-Creマウスとp53fl/fl Lck-Cre Largen-Tgマウスの4種類の遺伝的背景を持つマウスを準備した。各遺伝子型のマウス群ごとにいくつか個体を解剖し、胸腺・脾臓・リンパ節などを摘出したところ、生後90日でPtenfl/fl Lck-Creマウスに比べてPtenfl/fl Lck-Cre Largen-Tgマウスの胸腺のサイズが縮小していたことを見出した。しかしながらp53変異を背景に持つマウスではこのような差は見られなかった。これらの組織からT細胞を回収し、細胞外フラックス測定を行ったところ、Pten変異に由来する組織から得たT細胞とp53変異に由来する組織から得たT細胞では異なる代謝プロフィールを示すことが分かった。さらに、Largenの過剰発現の有無が、その代謝プロフィールに影響を与えることが分かった。これらのことから、上記マウスにおける胸腺サイズの違いは、それを構成するT細胞の代謝状態の違いに起因することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究計画では異なる遺伝的背景を持つ複数のリンパ腫形成モデルマウスを準備して実験を進める必要があるが、特にp53変異を持つ個体は不安定なため維持が難しく、解析に必要な個体数を確保するのに時間がかかっている。しかしながら、これまでに解析を行うことができた実験群において組織のサイズに差が生じていたを見出したことは大きな収穫である。さらに、その組織から単離したT細胞の細胞外フラックス解析により、異なる癌抑制遺伝子における変異と細胞レベルでの代謝状態の違いとの関連を示すことができた意義も大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の進捗状況に鑑み、より多くの個体を準備すべくマウスの飼育状況を拡充し、実験の促進をはかり、さらに十分なデータの蓄積に努める。また、これまでに得られた知見を癌の発症と進行への理解に結びつけるために、メタボロミクスなどの代謝関連の解析に加え、細胞死、細胞周期、DNA損傷修復などとの関わりについても調べていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に必要な経費を使った上で、次年度により多くの支出が生じる可能性が考えられたため、残額を繰り越すこととした。次年度使用額は、マウスの飼育拡充とメタボロミクス解析に充てることができればと考えている。
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Research Products
(2 results)