2018 Fiscal Year Research-status Report
mRNA翻訳機構によるmTOR阻害剤の抗がん作用への抵抗性獲得メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K07237
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
森田 斉弘 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 客員准教授 (50549475)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 抗がん剤 / 抵抗性 / mRNA翻訳 / 代謝リプログラミング / mTOR阻害剤 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに申請者は、mTORC1/4E-BPシグナル伝達経路が、mRNA翻訳を刺激することによってタンパク質合成およびミトコンドリアの機能の活性化を引き起こし、がん促進に関与していることを明らかにしてきた。このmTORC1に対する阻害剤は抗がん剤として開発が進められているが、そのほかの分子標的薬と同様に抗がん効果に対するがん細胞の抵抗性の獲得が問題となっている。本研究課題では、がん細胞のmTORC1阻害剤に対する抵抗性獲得の分子メカニズムをmRNA翻訳の観点から明らかにしたいと考えている。2018年度は、mTORC1阻害剤であるInk128とRapamycinに対して抵抗性を持つ肥満誘導性がんのマウスを、4E-BP遺伝子を欠損することによって作製することができた。また培養細胞においても、mTORC1阻害剤に対して抵抗性を示す肝臓がん細胞HepG2・Huh7や腎臓がん細胞786-O細胞を、阻害剤下において長期培養することにより単離した。予定していたように2018年度は、これらのがんモデルマウスや細胞を用いてポリソームプロファイリングを行い、抵抗性に関わるmRNA群を単離しRNA-seqによる同定を試みた。現在は、カロリンスカ研究所の共同研究グループにRNA-seqデータの解析を依頼している。また、以前に報告したmTORC1によるミトコンドリア機能の制御メカニズムを元に、mTORC1阻害剤等のキナーゼ阻害薬をミトコンドリア阻害薬と併用することによってキナーゼ阻害薬の抗がん作用を増強することに成功した。これらの結果を論文としてCell Metabolism誌に発表することができた。今後は、上記のRNA-seqの結果をもとに抗がん剤抵抗性のメカニズムを明らかにし、抗がん作用を増強する薬剤併用の組み合わせをさらに探索する予定である。以上のように、本研究課題の進捗状況は概ね順調である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、トランスレイトーム解析をもとに、がんの抗がん剤への抵抗性の獲得分子機構を明らかにしたいと考えている。計画初年度においては当初予定していたように、mTORC1阻害剤に対して抗がん作用をしめすがん細胞や、がんマウスモデルの作製に成功することができた。これらのがんからトランスレイトーム解析によってRNAを単離することができ、予定よりも早くRNA-seqを行うことができた。現在は、共同研究先とRNA-seqの解析について議論を進めている。次年度においては、これらのデータをもとに抵抗性の獲得分子メカニズムの一端を明らかにできると考えている。さらに、以前の論文の結果をもとにmTORC1阻害剤といったキナーゼ阻害薬とミトコンドリア阻害薬を併用することにより、抗がん作用を増強することができ、その増強の分子機構を代謝制御の視点から明らかにすることができた。これらの結果はCell Metabolism誌というトップジャーナルに筆頭著者として発表することができた。このことは当初の期待以上の結果であり、予想以上に研究計画が進展していることを証明している。現在投稿中の論文も2019年度中に発表できると考えられ、さらに研究計画を推し進めていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画は、予定していた以上に進んでおり、初年度にも関わらず筆頭著者として論文も発表することができている。今後は予定していたように、トランスレイトーム解析を推し進める予定である。さらに、免疫染色法や免疫ブロット法を遺伝子改変技術と組み合わせることにより、抗がん剤抵抗性獲得の分子メカニズムを詳細に明らかにできると期待している。これらの結果の一部は既に論文として投稿されており、今年度中に発表できると考えている。さらに、共同研究者との議論を推し進め、抗がん剤への抵抗性を減弱させる薬剤の併用療法を探索し、mTORC1阻害薬の抗がん作用を増強する新たな療法の可能性を示せればと考えている。
|
Research Products
(12 results)
-
-
-
-
[Journal Article] Hepatic posttranscriptional network comprised of CCR4?NOT deadenylase and FGF21 maintains systemic metabolic homeostasis2019
Author(s)
*M. Morita, N. Siddiqui, S. Katsumura, C. Rouya, O. Larsson, T. Nagashima, B. Hekmatnejad, A. Takahashi, H. Kiyonari, M. Zang, R. St-Arnaud, V. Giguere, I. Topisirovic, M. Okada-Hatakeyama, T. Yamamoto, N. Sonenberg
-
Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: 116
Pages: 7973~7981
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Translational and HIF-1α-Dependent Metabolic Reprogramming Underpin Metabolic Plasticity and Responses to Kinase Inhibitors and Biguanides2018
Author(s)
2.*L. Hulea, *S.P. Gravel, *M. Morita, M. Cargnello, O. Uchenunu, Y.K. Im, C. Lehuédé, E.H. Ma, M. Leibovitch, S. McLaughlan, M.J. Blouin, M. Parisotto, V. Papavasiliou, C. Lavoie, O. Larsson, M. Ohh, et al., P. Siegel, R.G. Jones, W. Muller, J. Ursini-Siegel, J. St-Pierre, M. Pollak, I. Topisirovic
-
Journal Title
Cell Metabolism
Volume: 28
Pages: 817~832.e8
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Translational control of ERK signaling through miRNA/4EHP-directed silencing2018
Author(s)
3.S.M. Jafarnejad, C. Chapat, E. Matta-Camacho, I.A. Gelbart, G.G. Hesketh, M. Arguello, A. Garzia, S.H. Kim, J. Attig, M. Shapiro, M. Morita, A. Khoutorsky, T. Alain, C. Gkogkas, N. Stern-Ginossar, T. Tuschl, A.C. Gingras, T.F. Duchaine, N. Sonenberg
-
Journal Title
eLife
Volume: 7
Pages: 35034
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
-
-
-
-
-