2019 Fiscal Year Research-status Report
アルギニンメチル基転移酵素PRMT5の異常活性による発がん機構の解明
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18K07238
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
市川 朝永 宮崎大学, 医学部, 助教 (80586230)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | がん / アルギニンメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はATLの発症因子を同定するために総合的ゲノムおよびエピゲノム解析を行った結果、染色体14q11領域の共通欠失領域に存在するNDRG2をがん抑制遺伝子候補として単離した(Nat Commun 2014)。NDRG2はphosphataseであるPP2Aと複合体を形成し、情報伝達系の制御に重要な因子であるPTENおよびNIKを脱リン酸化してPI3K/AKTおよびNF-κB情報伝達系を抑制することを見出した。NDRG2はストレス応答因子として低酸素を含む各種ストレスによって発現亢進し情報伝達系を負に制御する一方で、Ndrg2欠損マウスやNDRG2発現低下を示す各種がん細胞株では情報伝達系異常亢進、細胞増殖促進を引き起こし多種類の腫瘍形成に関与していた(Cell Signal 2015、Sci Rep 2015、Cancer Res 2017)。NDRG2発現低下はPP2A機能を低下させ、各種細胞内タンパク質群の高リン酸化を含む翻訳後修飾異常を蓄積させ、さまざまな情報伝達系の恒常的活性を引き起こし腫瘍発症に至る。新規のNDRG2/PP2Aの脱リン酸化基質候補としてアルギニンメチル基酵素群であるPRMT5を同定した。 ATL細胞におけるPRMT5 mRNAの発現は保たれているが高リン酸型PRMT5タンパク質は主として細胞質に局在していた。そこにNDRG2を発現させるPRMT5は脱リン酸化され核に偏在した。PRMT5の発現低下は、ATL細胞では細胞増殖を抑制し細胞死を誘導するが、NDRG2発現正常細胞ではこのような細胞変化がないことを確認した。さらに、我々はNDRG2発現が低下しているATLでPRMT5が有力な抗がん標的であるHSP90Aをアルギニンメチル化して機能制御していることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NDRG2発現低下がん細胞ではPRMT5は高リン酸化型として細胞質に局在し、分子シャペロンHSP90Aと共局在していた。PRMT5はHSP90Aをアルギニンメチル化し、情報伝達系および腫瘍形成に重要なタンパク質(クライアントタンパク質)群の安定化および活性化に寄与していた。さらに、NDRG2発現低下に伴うPRMT5のリン酸化、HSP90Aアルギニンメチル化を解析することは、腫瘍形成メカニズム解明および阻害剤開発に繋がる。
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Strategy for Future Research Activity |
NDRG2発現低下によるPRMT5局在および酵素活性の検討 NDRG2発現、欠損細胞株に汎アルギニンメチル化阻害剤(AdOx、MTA等)、特異的PRMT5阻害剤(EPZ015666、HLCL61、CMP5等)を付加して、基質(HSP90A、ヒストン等)の翻訳後修飾(アルギニンメチル化、リン酸化等)、情報伝達系(PI3K/AKT、NF-κB、MAPK、JAK/STAT等)および細胞表現系(増殖、細胞死、移動能等)を検討する。
新規PRMT5阻害剤開発のためのアッセイ系の確立 東大、理研等に存在する阻害剤候補のライブラリーから、NDRG2発現低下細胞に細胞増殖抑制効果を示し、HSP90Aアルギニンメチル化を抑制し、クライアントタンパク質を分解する化合物を検索する。
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Causes of Carryover |
(理由)概ね計画通りに進み、次年度に研究費を残すため
(使用計画)動物使用および物品費
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Research Products
(7 results)