2020 Fiscal Year Research-status Report
悪性リンパ腫における糖鎖とイムノグロブリンシグナル伝達との関連
Project/Area Number |
18K07240
|
Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 理 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00325953)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 糖鎖 / シアル酸 / レクチン / 細胞接着 / Igシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
背景:悪性リンパ腫では、糖鎖が様々な生物学的現象に関連する。当教室で樹立されたDiffuse large B cell lymphoma細胞株HBL-2やBurkitt lymphoma細胞株HBL-8 を用いて、糖鎖の変化が細胞接着に与える影響について検討した。方法:糖鎖のシアル化の改変にはNeuraminidase(N)処理やシアル酸転移酵素阻害剤Sialyltransferase inhibitor (STI)処理、N型糖鎖の阻害にはswainsonine (SW)やtunicamycin (TM) 処理を行い、galectinへの細胞接着アッセイを行った。また、抗IgM抗体の投与により接着の変化を解析した。結果:HBL-2細胞では、N処理にてgalectin-1, -3への接着が増強し、抗IgM抗体刺激により接着がさらに増強した。その効果はphosphatidyl inositol 3 kinaseの阻害剤wortmanninやRho familyのCdc42の阻害剤AZA1にて抑制された。シアル酸転移酵素をもつ細胞株HBL-8において、STI処理によりHPA lectinやgalectinへの細胞接着能が増強した。HBL-2では、IgMを介したgalectinへの接着はSW処理により増強し、TM処理では抑制された。結論:リンパ腫細胞ではシアル化やN型糖鎖構造の違いがIgMを介したgalectinへの接着を調節していることが推定された。細胞表面の糖鎖構造の変化がリンパ腫細胞の接着現象を調節していることが示された。 今後は、IgM上の糖鎖に対するリガンドである、mannan binding proteinやDC-SIGNへの相互作用についても検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ腫細胞株を用いて、ガレクチンへの接着が、シアル酸やN型糖鎖の状態により変化することが明らかとなった。また、ガレクチンへの接着には、IgM上の糖鎖が関わっている可能性が示唆された。western blotにおいても、N型糖鎖の阻害剤であるTunicamycinにて、IgMの分子量が減少し、IgM上のN型糖鎖が接着現象に関連していることが明らかとなった。 以上から、概ね、実験は適切に施行され、データは蓄積されつつあります。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、IgM上の糖鎖に反応する、mannan binding proteinやDC-SIGNへの接着についても解析を行い、接着とともに、免疫系細胞との相互作用についても検討する予定である。すなわち、mannan binding proteinやDC-SIGNとういレクチンは、免疫系細胞のmacrophageやdendritic cellsに発現しており、腫瘍免疫に関連する分子であるため、これらの免疫系細胞との相互作用により、細胞の接着や浸潤の調節のみならず、腫瘍免疫における糖鎖-レクチンの相互作用の役割が明らかとなってくることが予想される。現在、すでに、mannan binding protein, やDC-SIGNへの接着が、糖鎖を高マンノース型にすることで増強することが明らかとなってきており、再現性の有無を含めて、さらに研究を進めていくことが望まれる。
|