2019 Fiscal Year Research-status Report
Role of Src family kinases in the Drug Resistance and Progression of Neuroblastoma
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18K07242
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
堺 隆一 北里大学, 医学部, 教授 (40215603)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経芽腫 / Srcキナーゼ / キナーゼ阻害薬 / 細胞運動能 / 細胞増殖能 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経芽腫細胞NB39-nuを用いて、Srcキナーゼ阻害薬のサラカチニブ、ボスチニブ、ダサチニブの細胞増殖能、細胞運動能、細胞内タンパク質のチロシンリン酸化レベルへの影響などを解析した。この際、前年までに細胞増殖や細胞運動に対する影響を解析したALKキナーゼ阻害薬のクリゾチニブ、アレクチニブを比較対象として用いた。その結果、Srcキナーゼ阻害薬は神経芽腫細胞の細胞増殖能よりも細胞運動能に対して強い感受性を示し、特にダサチニブは10nM程度の低い濃度にても強く細胞運動能を抑制した。これに対してALK阻害薬は神経芽腫の細胞運動能と細胞増殖能に対して同程度の感受性しか示さず、Srcシグナル経路はALKシグナル経路とは異なった形で神経芽腫の悪性化に関わっていることが示唆された。 このSrcキナーゼ特有の細胞運動能制御に関与する下流分子を明らかにするため、Srcによってチロシンリン酸化を受ける基質タンパク質群のリン酸化状態の解析を行った。10nM程度の低濃度のダサチニブ処理によってp130Casやパキシリンなど複数のSrcキナーゼの基質タンパク質のチロシンリン酸化が強く抑えられることが確認された。さらに神経芽腫の運動能制御に関わるSrcの下流分子を同定する目的で、これらのSrc基質分子のsiRNAによる発現抑制を順次行っている。p130Casやパキシリンについては、発現抑制による運動能の低下は現時点で明確には認められていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種キナーゼ阻害薬を用いた細胞運動能や細胞増殖能の測定は、当初細胞数や培養条件のわずかな違いにより変動が大きく、安定した結果が得られにくかったが2年目に入って測定に最適な条件を決定して、飛躍的に安定したデータが得られるようになった。神経芽腫細胞は一般にsiRNAによるノックダウンの効率があまりよくないため、現在も分子によっては発現抑制が不十分で苦労しているものがあるが、今後このような分子に対してはCRISPR/Cas9によるノックアウトなども取り入れることによって、下流分子の解析を進めていく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析によってSrcキナーゼ阻害薬、その中でも特にダサチニブが極めて低濃度で細胞運動を選択的に抑制することがわかり、これがどのような分子のリン酸化を介した作用なのかを同定する必要がある。そのためにSrcの基質分子の発現抑制が細胞運動に与える影響を調べている。既にいくつかのSrcに基質分子に対してsiRNAを用いた発現抑制を行い解析を進めているが、siRNAによる発現抑制がうまくかからない分子もあり、sh-RNAを安定的に発現する細胞株を樹立する、CRISPR/Cas9による細胞でのノックアウトの系を導入するなどの手法でSrcキナーゼの下流で神経芽腫の運動能を支配している基質分子の同定を行っていく。特に質量分析でALKとの結合が見られたコルタクチンやδ-カテニンなどは有力な候補分子である。このようなアプローチが、進行した神経芽腫における新規の治療標的分子の同定につながると期待している。
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Causes of Carryover |
今年度中に行うべきタンパク質の発現抑制実験の条件検討に予想より時間を要したため、幾つかのタンパク質に関して解析が次年度に持ち越されることになった。
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Research Products
(5 results)