2018 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞の浸潤・転移能獲得を決定するマスター因子の解明とその制御に基づく転移抑制
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18K07243
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
信末 博行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (90525685)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞運動 / 転移 / アクチン細胞骨格 / 間葉系細胞 / MKL1 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの転移は、非転移性の上皮系がん細胞が上皮-間葉転換(EMT)を経て線維芽細胞様の性質を獲得することを皮切りに、細胞周囲の細胞外マトリックス(ECM)の分解と細胞運動を協調的に行うことにより生じる。これまでに、EMTを中心とした転移能獲得機構については多くの研究がなされてきたが、元々が間葉系のがん細胞の浸潤・転移能獲得を決定する分子機構は未解のままである。研究代表者らは最近の結果から、アクチン細胞骨格の動態により直接制御される転写調節因子MKL1を種々の間葉系細胞に発現誘導すると、細胞運動能が著しく増加することを明らかにした。また、MKL1の発現を惹起した間葉系細胞をマトリゲルとともにマウスへ皮下移植すると、ほとんどの細胞がマトリゲルから遊走することも見出しており、MKL1が間葉系細胞において細胞運動性の獲得を制御するマスター因子として働くことを示唆している。次いで、MKL1がどのような分子機構を介して細胞運動性獲得を制御するのかを明らかにする目的で、マイクロアレイ解析を行い、MKL1の発現誘導によって変動する遺伝子セットを同定した。これらの遺伝子群のGSEA解析を行った結果、MKL1の発現誘導によって細胞外マトリックス、細胞浸潤及びTGF-βシグナルに関する遺伝子群が有意に増加することが明らかとなった。さらに、転写因子解析において、MKL1によって発現変動した遺伝子群は主にSmad2及びSmad3によって制御されていることも分かった。これらのことから、MKL1はTGF-βシグナルを動かすことで細胞運動性の獲得に寄与することが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
間葉系細胞において転写調節因子MKL1がin vitro及びin vivoにおいて細胞運動性の獲得を制御するマスター因子であることを示せた。また、MKL1がTGF-βシグナルの制御に関わること、さらにはMKL1と共役する転写因子としてSmad2及びSmad3を見出しており、来年度のさらなる発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度において、MKL1が正常間葉系細胞の運動能の獲得に寄与することを見出したので、高い肺転移能を有するマウス骨肉腫細胞においてMKL1の発現を制御し、in vitro及びin vivoでの運動能及び転移能に及ぼす影響について検討する。また、MKL1がSmad2及びSmad3と相互作用することを明らかにするとともに、これらが直接結合することで発現が誘導される遺伝子と抑制される遺伝子をChip-seq解析により明確にする。
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Research Products
(3 results)