2019 Fiscal Year Research-status Report
CHK1阻害剤の細胞死誘導能の分子機構に着目した感受性遺伝子の同定と臨床応用
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18K07246
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
安藤 清宏 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 講師 (10455389)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (80581793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | CHK1阻害剤 / FGFR2 / ATM / DNA-PK / MYCN / p63 |
Outline of Annual Research Achievements |
Checkpoint Kinase 1に対する阻害剤(以下、CHK1阻害剤)は、非臨床において高い抗腫瘍効果が示されているにもかかわらず、臨床試験の結果はいまだ十分でないことから、その感受性を決定するバイオマーカーの同定が急務といえる。本研究は、CHK1阻害剤の感受性に関わる特徴的な遺伝的背景を探索することによって効果予測および適応決定に臨床応用可能な感受性遺伝子を同定し開発につなげることを目的とする。令和1年度は、まず前年度に同定された10番染色体長腕の欠失に起因するFGFR2遺伝子の機能喪失が、CHK1阻害剤の完全奏功が期待できる遺伝的背景であるかどうかの検証を行った。CHK1阻害剤に対して高感受性を示す神経芽腫細胞株のCHP134細胞にレンチウイルスを用いてFGFR2安定発現細胞株を作製したところ顕著にCHK1阻害剤に耐性を示すことが判明した。したがって、FGFR2遺伝子座の欠失に伴う当該遺伝子の機能喪失が、CHK1阻害剤の完全奏功が期待できる遺伝的背景である可能性が示唆された。さらに、当初の実験計画におけるCHK1阻害剤耐性を示すがんの遺伝的背景の探索については、ATMおよびDNA-PKのDNA損傷応答遺伝子に対する阻害剤がCHK1阻害剤の細胞増殖抑制効果を増強することを見出したことから、これらの遺伝子座が正常な神経芽腫においてCHK1阻害剤が耐性となる可能性が示唆され、これを論文報告した。また、p53機能獲得変異とCHK1阻害剤耐性との関連の有無の解析については、分担研究者より神経芽腫CHP134細胞においてp53ファミリーであるp63によるMYCN発現制御がp53依存性アポトーシスに関わることを見出し、論文報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず前年度の計画の遅延から、平成30年度の研究計画である「CHK1阻害剤の完全奏功が期待できるがんの遺伝的背景の探索」を引き続き行った。FGFR2の欠失がCHK1阻害剤の完全奏功が期待できる遺伝的背景であることが検証できたことから、当該年度の研究計画は順調に進捗した。次に、令和1年度の研究計画である「CHK1阻害剤耐性を示すがんの遺伝的背景の探索」については、実験の進捗の中で、DNA損傷修復機構がCHK1阻害剤の感受性を低下させる原因となることに着目して、ATMおよびDNA-PK遺伝子を見出し、これを検証した。そのため当初予定していたウイルスライブラリーを用いた候補遺伝子のスクリーニングを中止し、本研究成果の論文化を行った。さらに、p53機能獲得変異とCHK1阻害剤耐性との関連の有無の解析については、分担研究者によりp63によるMYCNの制御が神経芽腫細胞株のp53依存性アポトーシスに関連することが判明したことから、p63の欠失または変異もまたCHK1阻害剤耐性に関わる可能性が示唆された。したがって、当該年度はCHK1阻害剤耐性を示すがんの遺伝的背景としてこれら3つの候補遺伝子が同定されたことから、研究方法に変更点はあったものの当該年度の研究計画は順調に進捗したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究計画は「神経芽腫マウスモデルによるCHK1阻害剤感受性・耐性候補遺伝子の解析」であり、これまでに同定したCHK1阻害剤感受性・耐性候補遺伝子を標的に、MYCN Tgマウスの自然発症神経芽腫の初代培養細胞におけるCHK1阻害剤の治療増強効果を検討する。また、これまでにFGFR2の欠失がCHK1阻害剤の高感受性に寄与することから、その下流のシグナルの同定および既存の阻害剤によるFGFR2シグナル経路を標的としたCHK1阻害剤増強効果の可能性に着目して、さらなる検証を進めて、臨床応用に直結する成果の発表およびその論文化を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度の研究において候補遺伝子が早期に同定されたことで論文化が年度内に可能となったため掲載費用が生じた。一方では、レンチウイルスをライブラリーを用いたスクリーニングを中止できたため大幅なコスト削減による当該助成金が生じた。しかしながら、これらの方針変更によるFGFR2に関連する追加の研究計画ができたことから、翌年度分とした請求した助成金と合わせて、阻害剤等の追加物品の購入を行う計画である。
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Research Products
(3 results)