2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of novel therapeutic approaches based on the elucidation of disease specific metabolism in osteosarcoma
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18K07247
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
清水 孝恒 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (40407101)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 転移巣 / 代謝 / 治療抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の解析では、マウス骨肉腫AXT細胞を用いて、in vitro、in vivoのサンプルからメタボローム解析を施行した。メタボライトの発現パターンを比較して、相関係数を算出した結果、転移巣と原発巣の間、接着培養と非接着培養の間には高い相関がみられた。一方で、in vivoとin vitro由来サンプル間の相関係数は低下したが、非接着培養のパターンがin vivoにやや近いことが明らかとなった。非接着培養で強く増殖抑制効果を示す薬剤は転移巣に抗腫瘍効果を示す可能性を考え、分子プロファイリング支援活動(ADAMS)より供与頂いた化合物を用いてスクリーニングを行った。その結果、MEK阻害剤が非接着培養条件下でAXT細胞の増殖を強く抑制することが明らかとなった。MEK阻害剤のうち、trametinibは低濃度から効果を示し、正常細胞にはほとんど影響を与えなかったため、更なる解析を施行した。細胞周期解析では、trametinib添加によりAXT細胞にS期の減少とsubG1分画の上昇がみられた。その知見と一致して、CyclinD1の発現低下、apoptosisの誘導が確認された。一方で、ヒト骨肉腫細胞株では、trametinibはU2OSに高い増殖抑制効果を示したが、MG63、Saos2に対する効果は弱かった。trametinibのin vivoにおける抗腫瘍効果の検証では、単独投与で原発巣および、循環血中腫瘍細胞量が減少した。効果を増強させるため行った併用薬を用いたin vitroのスクリーニングの結果、rapamycin、cytarabineとdoxorubicinが候補薬剤として抽出された。trametinibとこれらの薬剤との併用投与は、原発巣および循環血中腫瘍細胞量に加え、肺転移巣の著明な減少が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
転移巣と、in vitroの接着・非接着培養条件におけるメタボライトの発現パターンの相関性から、転移巣を模倣する可能性のあるin vitroの培養条件として非接着培養を見出した。薬剤スクリーニングの結果、非接着培養で骨肉腫の細胞増殖を強く抑制するものとしてtrametinibを抽出した。しかしながら、in vivoにおける検証では、trametinibの単独投与は原発巣、血中循環腫瘍細胞を減少させたが、転移巣に対する効果は弱かった。trametinibは既存の抗腫瘍薬との併用で効果を増強させる可能性(アジュバントとして臨床応用できる可能性)が示唆されたが、単剤で転移巣に効果を示す薬剤を見出す必要がある。単独投与でtrametinibの転移巣への効果が弱かった知見から、薬剤スクリーニングを行う際に培養条件を見直す必要がある。即ち、メタボライトの発現パターンがin vivoとin vitroの条件の間ではかなり異なっており、非接着培養がin vivoの環境を模倣していないことが問題である。相関係数上、通常の接着培養に比較して非接着培養の方が、in vivoの環境にやや近いと考えられるものの、より転移巣に近い条件をin vitroで構築して薬剤スクリーニングを行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
<骨肉腫生体内代謝経路の解明と発がん・治療効果の関連を検証する> これまで、転移巣において特に高発現するメタボライトが抽出されている。この産生機構を明らかにし、関わる代謝酵素のノックダウンを施行し、in vivo腫瘍形成、転移巣の治療抵抗性に与える役割を明らかにする。骨肉腫実臨床で用いられる既存の抗腫瘍薬をマウス担癌モデルに投与しても転移巣は依然として残存し、治療抵抗性を示すことが明らかとなっている。転移巣、血中循環腫瘍細胞量はAXT細胞に発現するGFPをPCRで検出することにより、定量可能である。この系を用いて治療効果を判定する。即ち、候補分子の発現修飾を行った細胞に治療を行い、転移巣、血中循環細胞が減少すれば、治療抵抗性に関わる分子であることが示唆される。解析を通じて、代謝を標的として骨肉腫の新規治療法が確立できるか明らかにする。 <骨肉腫生体内代謝系を模倣したin vitroスクリーニング系の構築> これまで行ってきたin vitroのスクリーニングでは生体内の環境を完全には模倣していないため、抽出された薬剤が転移巣に強い効果を示さないという限界が明らかとなった。このため、より転移巣に近い条件をin vitroで再現して薬剤スクリーニングを行う必要がある。増殖因子、サイトカイン、転移関連matrixをin vitroの培養細胞に添加して代謝の観点から生体内の代謝をin vitroで模倣した系を構築し、薬剤スクリーニングを施行する。抽出された候補薬剤を用いてin vivoの効果検証を行い、転移巣に強い抑制効果を示す薬剤を取得する。 さらに、これまでの解析からAXT細胞ではピリミジン代謝経路の活性化がみられ、シタラビンが強い増殖抑制効果を示す薬剤として抽出された。シタラビンは骨肉腫の実臨床では使用されておらず、適応の妥当性を判断するため効果検証を行う。
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Research Products
(5 results)