2018 Fiscal Year Research-status Report
新規mTORシグナル伝達機構による細胞がん化促進機構の解明
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18K07255
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
佐藤 龍洋 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 主任研究員 (70547893)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Rheb / SmgGDS / mTORC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、mTORC1の活性化因子Rhebの結合タンパク質として申請者らが同定したSmgGDSが、Rheb-mTORC1シグナル伝達経路を調節する分子機序について解析を行う。また、mTORC1の新規基質候補タンパク質に関して、これらの機能制御を明らかにすることを目的としている。また、mTORC1活性化が高頻度で見られる悪性中皮腫(中皮細胞がん)に着目し、mTORC1シグナル関連因子の役割を明らかにし、SmgGDSが悪性中皮腫の治療標的となるか評価する予定である。 SmgGDSはRhebの局在制御に関わる可能性が考えられること、また、Rhebの活性化因子や局在制御因子はこれまでに同定されていないことから、まずはじめにSmgGDS による Rheb の局在制御機構の可能性について解析した。細胞を細胞質および細胞膜画分に分画したところ、Rhebは細胞膜画分だけでなく細胞質画分に多く存在することが明らかとなった。また、蛍光染色による局在解析でもRhebの局在を確認した。次にSmgGDSをノックダウンしたところ、Rhebの細胞質画分が減少し、反対に細胞膜画分の量が増大した。このことから、SmgGDSはRhebの局在に影響を与えると考えられた。また、Rhebの変異体を作成し、SmgGDSとの結合を検出したところ、一部変異体が強くSmgGDSと結合することを見出した。一方、mTORC1活性化に関わる細胞外アミノ酸量や血清濃度はRhebの局在を変化させなかった。これらの結果から、SmgGDSによるRheb-mTORC1制御の分子機構について、これまでに報告されてきたmTORC1制御機構とは異なる新しい制御機構が存在する可能性が示唆された。新規mTORC1基質に関しては、次年度からの解析のため、特定したリン酸化部位に対する非リン酸化変異体およびリン酸化ミミック変異体等を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Rhebは細胞の様々な機能を制御するmTORC1の直接の活性化因子であるが、Rhebの制御機構についてはいまだ不明な点が多かった。今回、Rhebと新規結合因子SmgGDS1との結合様式について解析を行い、Rhebの変異体がSmgGDSとの結合に影響を及ぼす結果が得られた。さらに、SmgGDSのノックダウンによりRhebの局在に変化が見られることがわかった。これらの結果から、SmgGDSによるRhebの制御の可能性、およびRheb-SmgGDSの結合を調節する分子機構の存在が示唆された。また、mTORC1新規基質候補の解析準備も順調に進んでおり、本研究はおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、SmgGDSによるRhebの局在制御についてさらに検討を行うとともに、この制御がRhebによるmTORC1活性化に影響を及ぼすか検討する。また、mTORC1シグナル伝達経路の活性化が高頻度におきている中皮腫細胞を複数株使用し、SmgGDSががん治療の標的となるか検討する。mTORC1基質については変異体を用いて基質リン酸化による機能制御や細胞機能に対する役割を検討する。SmgGDS-RhebによるmTORC1制御の解析についての研究について興味深い知見が得られた際にはこちらの解析を優先し、マウスを用いた中皮腫細胞移植実験を開始する。
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Causes of Carryover |
所有する試薬類を使用して一部実験を行うことができたために未使用額が生じた。来年度もこれらの試薬類を使用して解析を行うため、未使用額はその購入経費に充てることとしたい。
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