2019 Fiscal Year Research-status Report
新規mTORシグナル伝達機構による細胞がん化促進機構の解明
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18K07255
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
佐藤 龍洋 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 主任研究員 (70547893)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Rheb / mTORC1 / SmgGDS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1)SmgGDSのRheb-mTORC1シグナル伝達経路制御機構および中皮腫に対する治療標的としての評価について、また、2)mTORC1の新規基質の同定とその生理的意義について、の2つの研究を遂行している。前年までに1)の研究について、SmgGDSとRhebの結合様式、およびSmgGDSによるRhebの細胞内局在の変化を明らかにしており、研究が進んでいることから、本年度も1)を中心に研究を進めることとした。まず初めに、SmgGDSを抑制することによるmTORC1シグナル伝達経路の阻害が、悪性中皮腫の治療標的となる可能性について検討した。Rhebを過剰発現させてmTORC1が活性化した正常不死化中皮細胞を用いて、SmgGDSのノックダウンを検討したところ、細胞の増殖が有意に阻害された。さらに、mTORC1が高活性化した患者由来の悪性中皮腫細胞株2種を用いてSmgGDSをノックダウンしたところ、こちらも有意に増殖を抑制した。また、SmgGDSのノックダウンしたこれら悪性中皮腫細胞株はノックダウンをしていないコントロール細胞と比較してスフェロイド細胞塊の形成が阻害された。海外のデータベースを用いて悪性中皮腫患者におけるSmgGDSの発現量を調べたところ、SmgGDSの発現量が多い悪性中皮腫患者は予後が不良であるという解析結果を得た。現在、薬剤投与によりSmgGDSがノックダウンされる悪性中皮腫細胞株を移植したモデルマウスを作製しており、SmgGDSが悪性中皮腫細胞株に対する治療標的となる可能性についてさらに検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SmgGDSはRheb-mTORC1経路を活性化すると考えられたため、mTORC1の活性化が高頻度に見られる悪性中皮腫において、SmgGDSの抑制が治療標的となる可能性が考えられる。今回、データベースによるSmgGDSの高発現が悪性中皮腫の悪性化と相関するデータが得られ、また、インビトロの実験においても、SmgGDSの抑制が悪性中皮腫細胞の増殖を阻害するという結果が得られた。また、実験動物を用いたインビボ解析もすでに進行していることから、本研究はおおむね順調に進んでいるといえる
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、SmgGDSのノックダウンによる悪性中皮腫の増殖抑制効果についてインビボ解析を行うとともに、SmgGDS発現量やRheb-mTORC1シグナル伝達経路が悪性中皮腫に及ぼす影響についてデータベースを利用したドライ解析を実施する。これらのデータをもとに、SmgGDSの治療標的としての評価を行う。また、mTORC1の新規基質について、変異体やリン酸化部位を認識する抗体を作製し、リン酸化によるタンパク質機能の制御や細胞機能に対する影響について検討する。
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Causes of Carryover |
2つの研究予定のうち、片方の研究が順調に進み、優先的に研究を進めたため、もう片方の実験に使用する予定であった一部消耗品の購入が控えられたため
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