2018 Fiscal Year Research-status Report
Rapid cloning of tumor reactive TCR genes for personalized TCR-T cell therapy
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18K07260
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
浜名 洋 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 客員准教授 (90551549)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | T細胞受容体(TCR) / WT1 / 腫瘍浸潤リンパ球 / TCR-T細胞療法 / TCR遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん抗原WT1陽性腫瘍(大腸がん、乳がん、甲状腺がん)に浸潤したT細胞からWT1反応性のTCR遺伝子を取得することを目的に研究を進めている。 2018年度は、大腸がん23名、乳がん8名、甲状腺がん3名の患者の手術により切除された腫瘍組織よりRNAを抽出し、RT-PCRによりWT1遺伝子の発現を解析した。WT1の陽性率は、大腸がん83%(19名)、乳がん63%(5名)、甲状腺がん100%(3名)であった。本研究では20例以上のWT1陽性腫瘍を対象に研究を行うことを目標としており、十分なWT1陽性腫瘍サンプルを確保できている。次に、WT1陽性腫瘍のHLA遺伝子を、腫瘍組織RNAを用いてRT-PCRにより解析した。現在までにHLA-Aについては、大腸がん16名、乳がん4名、甲状腺がん3名の解析が終了している。HLA-Bに関しては大腸がん2名、乳がん1名、甲状腺がん2名の解析が、HLA-Cについては大腸がん2名、乳がん1名、甲状腺がん2名の解析が終了した。 TCRに関しては、WT1陽性患者(大腸がん19名、乳がん5名、甲状腺がん3名)のうち、大腸がん8名、甲状腺がん2名の腫瘍組織から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を取得し解析した。TIL中のPD1+ CD8+またはPD1+ CD137+ CD8+ T細胞を、セルソーターを用いて単一T細胞として分取し、Multiplex one-step RT-PCR法によりTCR cDNAを増幅し、TCRレパートリー解析を行った。その結果、いずれの腫瘍においても、TIL中の活性化T細胞中にクローン性のT細胞が含まれていることが確認され、各TILから20~50種類のTCR cDNAが取得できた。現在、取得したTCRのWT1反応性を解析する為に必要な、WT1ペプチド/患者HLA抗原提示細胞の作製方法の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
腫瘍検体におけるWT1の発現解析とWT1陽性腫瘍の確保、腫瘍でのHLA遺伝子の発現解析、およびTILからのTCR遺伝子の取得に関しては、計画通りに順調に進んでいる。 一方、本研究では、取得したTCRのWT1反応性を解析するために、WT1のペプチド断片を高効率で提示できる抗原提示細胞(APC)を作製する必要があるが、これに関しては計画通りに進んでいないことから、「やや遅れている」という進捗状況とした。 APCの作製に関して計画では、WT1のN末端にユビキチン(Ub)を、C末端にオルニチンデカルボキシラーゼ分解ドメイン(ODC)を付加した融合タンパク質Ub-WT1-ODCとしてWT1を発現させ、WT1のプロテアソームでの分解の促進することでAPCを作製する予定であった。そこで、Ub-WT1-ODCを発現させるためのcDNAを人工遺伝子合成し、発現ベクターを作製した。このUb-WT1-ODC cDNA発現ベクターと患者のHLA cDNAをCOS-7へ遺伝子導入した細胞をAPCとする計画であった。そこで、この方法で作製したCOS7-A24-WT1(Ub-WT1-ODC cDNAとHLA-A*24:02 cDNAを遺伝子導入)が十分なWT1ペプチド提示能を示すか否かを、既存のHLA-A*24:02拘束性WT1ペプチド反応性のTCRを発現させた293T Luc細胞を用いて確認したが、TCRのWT1ペプチドに対する反応が見られなかった。一方、COS7-A24-WT1にペプチドをパルスした細胞をAPCに用いた場合は、TCRの反応が見られたことから、HLA-A*24:02の発現は問題なく、WT1のペプチドの提示に問題があると考えられた。現在、計画した方法では予定通りに研究進めることが難しい状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍検体におけるWT1の発現解析とWT1陽性腫瘍の取得、腫瘍組織からのHLA遺伝子のクローニング、およびTILからのTCR遺伝子の取得に関しては、計画通りに順調に進んでおり、今後も引き続き同様に進めていく。 取得したTCR遺伝子のWT1反応性を解析に関しては、計画の変更を予定している。これまでの計画では、WT1 cDNAをCOS-7に遺伝子導入した細胞を抗原提示細胞としていたが、これでは我々のアッセイ系では抗原提示が十分ではないことが2018年度の研究により明らかになった。そこで、今後は方針を変更し、NetMHCを用いて患者のHLAに結合するWT1ペプチドを予測して人工合成し、そのペプチドを患者のHLAを発現したCOS-7あるはK562細胞にパルスした細胞を抗原提示細胞として用いることを検討する。
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Causes of Carryover |
研究計画では、取得したTCR遺伝子のWT1反応性の解析を2018年度から開始する予定であったが、この実験に用いる抗原提示細胞の作製が計画通りに進まなかった為、TCR遺伝子のWT1反応性の解析に用いる試薬の購入が見合わせとなり次年度使用額が生じている。2019度は、抗原提示細胞の作製方法を変更して、TCR遺伝子のWT1反応性の解析を進める予定であり、その解析のために繰り越した予算を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)