2018 Fiscal Year Research-status Report
LIX1L蛋白質発現癌細胞でのRNA翻訳伸長反応制御による標的治療薬開発研究
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18K07263
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中村 悟己 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (20377740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椙村 春彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00196742)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 翻訳伸長因子 / 翻訳後修飾 / 癌分子標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
LIX1L蛋白質とEEF1G蛋白質の結合を阻害する新規の標的治療薬を開発する基礎的研究を行うことを目的としました。 LIX1L蛋白質発現の有無については胃癌細胞株KATO-III(+)、OCUM-1(+)、MKN45(+)、NUGC4(-)、膵臓癌細胞株PK2(+)、TCC-PAN2(+)、大腸癌細胞株LoVo(+)、SW948(+)、急性骨骨髄性白血病細胞株HL-60(+)、U937(+)、CCRF-CEM(+)、慢性骨髄性白血病細胞株K562(+)、多発性骨髄腫RPMI8226(-)であり、一方EEF1G蛋白質の発現はすべての細胞株において細胞質に優位に発現が認められました。また、癌組織の大腸癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、食道癌、肝細胞癌、腎細胞癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌、及び正常組織でのEEF1G蛋白質の発現もすべてにおいて認められました。これらの結果から、LIX1Lは癌細胞特異的に発現する一方で、翻訳伸長因子EEF1Gは癌細胞や正常細胞においても発現が認められ、細胞の生存に必須の蛋白質であることが推測されました。 次に、EEF1GとLIX1L蛋白質の結合を阻害する方法として、EEG1Fのアミノ酸配列から相同性ペプチドを作製し、そのペプチドによるEEF1GとLIX1Lの結合阻害効果を検討しました。作成した様々なペプチドの中からPK294/296ペプチド(294番目と296番目のリジンを含む)において、LIX1L発現胃癌細胞株KATO-III、OCUM-1、MKN45、膵臓癌細胞株PK2、TCC-PAN2で細胞増殖抑制効果が確認されました。LIX1L蛋白質とEEF1G蛋白質の結合阻害効果も同時に見出しました。 以上から、LIX1L発現癌細胞においてEEF1Gとの結合を阻害することにより癌細胞の増殖が阻害できるペプチド候補を見出すことができました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LIX1L蛋白質発現癌細胞で、EEF1G蛋白質内のLIX1L蛋白質との結合に関与するドメインに対する相同性ペプチドによる阻害効果を介した癌細胞増殖抑制効果の評価をin vitroにおいて行い、新規標的治療薬開発を目指した基礎的研究を行いました。 (1)LIX1L発現癌細胞株として、11種類、LIX1L非発現癌細胞株として2種類を用いて、EEF1G蛋白質発現について解析した結果、EEF1Gはすべての癌細胞株において細胞質優位に発現を認めました。本年度の計画は達成されました。 (2)様々な癌組織の大腸癌、肺癌、乳癌、甲状腺癌、食道癌、肝細胞癌、腎細胞癌、前立腺癌、膵臓癌、卵巣癌でのEEF1Gの発現を確認しました。すべての癌組織と正常組織においてEEF1G蛋白質の発現が認められました。本年度の計画は達成されました。 (3)EEF1GとLIX1L蛋白質の結合を阻害する方法として、EEG1Fのアミノ酸配列から10アミノ酸を選び、相同性ペプチドを作製し、EEF1GとLIX1Lの結合阻害効果を検討しました。リン酸化部位としてはチロシン(2個)、セリン(11個)、スレオニン(7個)を含むアミノ酸配列から20種類の相同性ペプチド、翻訳後修飾部位としてアセチル化(11個)、ユビキチン化(11個)、スクシニル化(5個)を含むアミノ酸配列から27種類の相同性ペプチドを作製しました。これら47種類のペプチドを用いてMKN45細胞株を用いて抗腫瘍効果のスクリーニングを行った結果、スクシニル化の候補部位である294/296番目のリジンを含んだPK294/296ペプチドにのみ抗腫瘍効果が認められました。また、このペプチドにLIX1LとEEF1Gの結合を阻害する効果があることが確認できました。本年度の計画は達成されました。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、LIX1L発現癌細胞においてEEF1G蛋白質に対する相同性ペプチドPK294/296が抗腫瘍効果を持ち、LIX1LとEEF1Gの結合を阻害する作用を併せ持つことが示されました。したがって、PK294/296ペプチドがLIX1L発現癌細胞においてEEF1Gとの結合を阻害することにより抗腫瘍効果をもたらすことが推測されました。今後、LIX1L発現癌細胞においてLIX1L/EEF1G複合体の機能を明らかにすること、LIX1L/EEF1Gと複合体が癌細胞においてどのような遺伝子の翻訳調節に関与しているかを明らかにすることにより、この蛋白質複合体を標的とした治療薬の有効性が明らかとなります。(1)in vivoでの相同性ペプチドの抗腫瘍効果について明らかにする。(2)LIX1L発現癌細胞においてLIX1L/EEF1G複合体の機能を明らかにする。(3)LIX1L/EEF1Gと複合体が癌細胞においてどのような遺伝子の翻訳調節に関与しているかを明らかにする。(4)EEF1GとLIX1L蛋白質の分子構造から結合部位の同定と結合阻害物質の探索する。 今後、これらの課題を明らかにすることによりLIX1L蛋白質とEEF1G蛋白質の結合を阻害するペプチドや低分子化合物の合成や同定が可能となり、新規の標的治療薬を開発する基礎的研究を行うことが可能になると考えられます。 翻訳伸長因子EEF1Gを標的とする治療薬はこれまでに報告はなく、EEF1Gを標的とする治療薬開発については我々が初めてであり、様々な種類の癌に対して有効な新規標的治療薬となる可能性があります。
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