2019 Fiscal Year Research-status Report
LIX1L蛋白質発現癌細胞でのRNA翻訳伸長反応制御による標的治療薬開発研究
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18K07263
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
中村 悟己 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (20377740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椙村 春彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00196742)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 癌特異的蛋白質 / 核酸医薬 / 蛋白質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
LIX1L蛋白質とEEF1G蛋白質の結合を阻害する新規の標的治療薬を開発する基礎的研究を行うことを目的とし、本年度は以下の3点につき検討を行いました。 i)LIX1LとEEF1Gの相互作用の意義を検討する。:LIX1LとEEF1Gの結合を解離させること(PK294/296添加)でin vitroにて癌細胞の増殖抑制を確認しました。MKN45(LIX1L陽性)とNUGC-4細胞(LIX1L陰性)をペプチドPK294/296処理したところ、MKN45細胞において癌細胞増殖抑制を認め、NUGC-4細胞では細胞増殖抑制作用は認められまず、両者の結合が癌細胞の増殖に関与していることが示唆されました。 ii) Selection biomarkerの候補を見出す。:解析対象として293FLG細胞と293FLG-LIX1L細胞の2種類を用い、ペプチドPK294/296処理前後にて、細胞内の翻訳後修飾の解析を①アセチル化、②ユビキチン化、③スクシニル化について行ったところ、ペプチドPK294/296添加により細胞内の様々な機能性蛋白質の翻訳後修飾に変化を与えることが明らかとなりました。 iii) HTS screening系を樹立する。:LIX1Lおよび EEF1Gの2種の蛋白質の相互作用をNanoBiTシステムを用い、蛋白質結合阻害剤探索のためのスクリーニング系構築を行いました。293細胞株にLIX1LとEEF1Gのリコンビナント蛋白質を発現させ、両蛋白質の結合により発光を検出するシステムにおいて、その組み合わせの最適化を行い、最適化ペアの組み合わせを同定しました。 これらの結果から、LIX1LとEEF1G蛋白質の結合を抑制することは様々な蛋白質の翻訳後修飾に影響を与えることが明らかとなり、それらの結合を阻害する化合物のスクリーニング系の構築が可能になりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の以下3点の進捗状況は i) LIX1LとEEF1Gの相互作用の意義を検討する。ii) Selection biomarkerの候補を見出す。iii) HTS screening系を樹立する。ことの3点を柱に研究を進めました。 i) LIX1LとEEF1Gの結合を阻害することにより、LIX1L1発現がん細胞の増殖が特異的に阻害されることが明らかとなり、両者の結合ががん細胞の増殖に関与していることが示唆されました。本年度の計画は達成されました。 ii) Selection biomarkerの候補を見出す端緒として、ペプチドPK294/296を加えることによるがん細胞内での蛋白質の翻訳後修飾に与える効果を検討しました。解析対象として293FLG細胞と293FLG-LIX1L細胞の2種類を用い、ペプチドPK294/296処理前後にて、細胞内の翻訳後修飾の解析を①アセチル化、②ユビキチン化、③スクシニル化について行ったところ、ペプチドPK294/296添加により細胞内の様々な機能性蛋白質の翻訳後修飾に変化を与えることが明らかとなりました。本年度の計画は達成されました。 iii) HTS screening系を樹立するために、LIX1Lおよび EEF1Gの2種のタンパク質の相互作用をNanoBiTシステムにより解析できる安定発現株を樹立し、蛋白質結合阻害剤探索のためのスクリーニング系構築を行う。293細胞株にLIX1LとEEF1Gのリコンビナント蛋白質を発現させ、両蛋白質の結合により発光を検出するシステムにおいて、その組み合わせの最適化を行い、最適化ペアの組み合わせを同定しました。本年度の計画は達成されました。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、LIX1L発現癌細胞においてEEF1G蛋白質に対する相同性ペプチドPK294/296が抗腫瘍効果を持ち、LIX1LとEEF1Gの結合を阻害する作用を併せ持つことが示され、PK294/296ペプチドがLIX1L発現癌細胞においてEEF1Gとの結合を阻害することにより抗腫瘍効果をもたらすことが推測されました。今後、詳細なLIX1L/EEF1G複合体の機能を明らかにすること、LIX1L/EEF1Gと複合体が癌細胞においてどのような遺伝子の翻訳調節に関与しているかを明らかにすることにより、この蛋白質複合体を標的とした治療薬の有効性が明らかにします。 そのために下記の3点を計画します。 i) LIX1LとEEF1Gの相互作用の意義を検討する。ii) Selection biomarkerの候補を見出す。マルチオミックス解析結果の分析から上記2点につき検討を進める。iii) HTS screening系を樹立する。 CellベースでのNanoBitシステムによるスクリーニング系を確立するとともに、候補化合物の絞り込みを行う。 今後、これらの課題を明らかにすることによりLIX1L蛋白質とEEF1G蛋白質の結合を阻害するペプチドや低分子化合物の合成や同定が可能となり、新規の標的治療薬を開発する基礎的研究を行うことが可能になると考えらます。翻訳伸長因子EEF1Gを標的とする治療薬はこれまでに報告はなく、EEF1Gを標的とする治療薬開発については我々が初めてであり、様々な種類の癌に対して有効な新規標的治療薬となる可能性があります。
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