2021 Fiscal Year Research-status Report
小動物のチェレンコフ光分子イメージングにおけるハイブリッド光検出法の最適化
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18K07270
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
古嶋 昭博 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 准教授 (20161903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 和浩 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90578816)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チェレンコフ光 / 蛍光・発光イメージングシステム / ガンマ線 / CsI固体シンチレータ / ハイブリッド光イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小動物生体内における放射性分子プローブをチェレンコフ光で可視化する際の深部イメージング検出能を、生体外でのガンマ線シンチレーションを併用することによりさらに向上させるハイブリッド光イメージング(HLI)を最適化し、マウスなどの小動物へ応用する技術を開発することである。 本研究のこれまでの実験結果から、HLIでは従来の液体シンチレータによるガンマ線の高感度検出に課題があったために、透明性の高い固体シンチレータの使用が最重要手段であった。幸い当該年度に、国内で固体シンチレータを製造供給可能なメーカー(I.S.C.Lab. K.K、大阪)よりHLIに適当なサイズ(長さ50 mm x 幅50 mm x 厚さ1 mm, 1.5 mm)のヨウ化セシウム(CsI)を入手できた。そこで、Cs-137のガンマ線(662 keV)に対して先に購入した固体有機プラスチックシンチレータ(1 mm厚)と比較した所、約10倍以上の高検出感度を持つという重要な知見が得られた。その後、低エネルギーガンマ線を出す放射性同位元素(I-125, I-123, I-131, Tc-99mなど)を用いて、CsIに対する各固有のエネルギー毎の計数率(感度)や点応答イメージ(空間分解能)を詳しく調べ、液体シンチレータと比較したときのCsIの有効性を解明することを計画していた。しかし、これら一連のイメージング測定が行える放射線管理区域を有する施設の空調設備工事や建物工事が長期に渡ったため、計画した実験が困難となった。 次年度では、上記の計画通りに実行できなかったCsI測定を速やかに開始し、CsIのイメージング特性を明らかにすることにより HLIの最適化を行う。さらに、別予算で入手した、マウスの模擬ファントムを用いて、この最適化された HLIの有用性についても検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当該年度は、当初の3年間の研究実施計画から1年の延長を認められた年度であった。これまでの計画では、小動物生体を含めた物質内でのベータ線とガンマ線を同時放出する放射性分子プローブの光検出において、ベータ線放出に伴うチェレンコフ光のみの物体内の深部検出の欠点を補助するためのガンマ線に対する蛍光(シンチレーション)によるハイブリッド光イメージング(HLI)を高効率化できる固体シンチレータを入手でき次第、基礎的な予備実験開始を目指していた。しかし光イメージング装置が利用できる放射線管理区域を有する施設内の長期間の設備機器工事などで放射性同位元素の使用が困難となり、予定した研究遂行に遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目的は、ベータ線とガンマ線両方を同時放出する放射性分子プローブの光検出イメージングにおいて、ベータ線により発生するチェレンコフ光のみの生体内深部光検出低下の欠点を補うために、生体外でのガンマ線のシンチレーション光検出により放射性分子プローブの検出能力を向上させるハイブリッド光イメージング(HLI)の最適化技術の開発である。また、固体シンチレータによるシンチレーションイメージングは、ガンマ線のみを放出する放射性分子プルーブにも容易に応用可能である。 この研究の遂行のために、従来の液体シンチレータに代わる固体シンチレータの入手が最重要課題であったが、当該年度に先ずは厚さ1 mmと1.5 mmのCsI固体シンチレータを購入できたために、現在容易に購入可能なI-125, I-123, Tc-99mなどのガンマ線のみを放出する放射性同位元素を用いて点状や線状の線源を作成し、液体シンチレータ、固体有機プラスチックシンチレータ、CsIの3種類のシンチレーションイメージング実験を行う。さらにそれらの放射性同位元素を別予算で購入したマウスファントム内部に挿入して、CsIイメージングの効果を確かめる。可能であればさらに0.5 mm程度の厚さの CsIの入手を試み、CsIの最適化について調べる。次に、ベータ線とガンマ線両方を放出するI-131に対しては、同様の線源とファントムを用いてチェレンコフ光とCsIシンチレーションによるHLIの効果を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度に、ベータ線とガンマ線を同時放出する放射性分子プローブのチェレンコフ光による生体内深部検出を補助するガンマ線シンチレーションのためのHLI用のCsI固体シンチレータを入手することができた。しかし光イメージング実験に必須の蛍光・発光用イメージングシステムを利用できる施設内の放射線管理区域が長期間の設備工事などのために放射性同位元素の使用が困難になり、HLIの実験に必要な高額な放射性同位元素(ほとんどは半減期が比較的短い)を購入する必要がなくなり前年度に未使用額が生じた。さらに昨年度に引き続き当該研究に必要な国内外での情報収集や学会参加出張が新型コロナウイルスの影響により遂行できなかったために当初旅費予算に残額が生じてしまった。 最終年度となる次年度は、これまでの未使用額の助成金により、先ずは当該年度に入手した2つの厚みの違うCsI固体シンチレータの他に、さらに厚さの異なるCsIを追加購入し、実験に必要な放出放射性同位元素および実験器材消耗品を購入して、できるだけ当初計画に沿うように円滑な執行に努めたい。
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