2019 Fiscal Year Research-status Report
第4世代ビスホスホン酸によるγδ型T細胞の新規活性化機序を応用した癌免疫療法開発
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18K07274
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
小林 博人 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (80318047)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガンマ・デルタ型T細胞 / 癌性腹水 / 第4世代ビスホスホン酸 / 癌免疫細胞療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、癌性腹膜炎による難治性腹水に対し、新たな治療戦略として腹水中のガンマ・デルタ型T細胞を用いた癌免疫細胞療法を開発することである。癌性腹膜炎の症状緩和には、腹水を穿刺採取し、中空糸濾過カラムを通して癌細胞を含む細胞成分を除去後、濃縮して体に有用な蛋白を回収して、患者に静脈投与する腹水濾過濃縮再静注法が有用である。本研究では濾過カラムに残存し、本来は破棄される細胞成分を用いることが特徴である。本年度は、培養した活性化ガンマ・デルタ型T細胞が、末梢血より調製した活性化ガンマ・デルタ型T細胞同様に抗腫瘍活性を示すかどうかの実験条件の検討、及び腹水からの検体採取、処理を行った。実験に供するため、文書による同意の得られた、難治性腹水を有する卵巣癌、卵管癌、腹膜癌の患者8人から、腹水濾過濃縮再静注法の際に濾過カラムより細胞成分を採取し、液体窒素タンクに凍結保存した。当部で自己血貯血を施行し、文書による同意の得られた患者9人より、末梢血単核球から活性化ガンマ・デルタ型T細胞を調製し、CD107aの細胞表面への表出(脱顆粒)を指標とする細胞障害活性を測定する実験系の確立を目指した。まず、活性化ガンマ・デルタ型T細胞による脱顆粒を測定するための条件設定を行った。PMAとイオノマイシンによるT細胞レセプター刺激を介さないポリクローナルな刺激、及び抗CD3抗体によるT細胞レセプターからの刺激で、活性化ガンマ・デルタ型T細胞の脱顆粒を測定する条件を決めた。次に、癌細胞株をターゲット細胞とし、共培養においても脱顆粒を測定するための、共培養時間及びエフェクター、ターゲット比を検討した。この検討で、癌細胞株をターゲットとした場合も、活性化ガンマ・デルタ型T細胞の脱顆粒が認められ、細胞障害活性を測定することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
効率的な活性化ガンマ・デルタ型T細胞の培養方法の開発を継続的に行っている。 昨年度の研究で、腹水をナイロンウールカラムに通すと癌細胞は約1/5に減じ、単核球が約3倍程度の濃縮することが可能であった。腹水中の癌細胞を減らすとガンマ・デルタ型T細胞の増殖率が10倍程度改善することが判明した。癌細胞はPD-L1などの免疫チェックポイント分子を細胞表面に発現しており、免疫監視システムから逃避していることが知られている。予備実験で健常人末梢血中のガンマ・デルタ型T細胞は、活性化後早期にPD-1を発現し、1週間後から発現が急速に減少することが分かっている。そこで、癌細胞を減らした上で、PD-1/PD-L1経路を遮断することでさらに培養効率が改善するかを検討した。培養開始から7日間抗PD-1抗体を添加した群と添加しない群で比較したが、予想に反して有意な改善は認められなかった。腹水中のガンマ・デルタ型T細胞はすでにPD-L1を発現している癌細胞と接触している為に接触を阻害しても効果が得られなかった可能性や免疫チェックポイント分子は他にも多数ある為、PD-L1/PD-1経路のみでは十分な効果が得られなかった可能性が考えられた。従来、活性化ガンマ・デルタ型T細胞の細胞傷害活性の測定は、ラジオアイソトープを用いて行っていたが、今年度はフローサイトメーターで脱顆粒を見ることで細胞傷害活性をみる測定系を確立した。この系では、標的細胞として癌細胞株を用いても測定が可能であることがわかり、臨床応用を考える上でより有用なデータが得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在臨床で用いられている免疫チェックポイント分子阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体がある。今年度の研究ではPD-1/PD-L1経路の遮断のみでは、予想に反し培養効率を上げることができなかった。今後はCD28/CTLA-4経路の遮断が、活性化ガンマ・デルタ型T細胞の増殖に及ぼす影響を調べ、培養効率向上の手段となるかを検討する。また、一方昨年度の研究で、活性化ガンマ・デルタ型T細胞を培養する上で、混入する癌細胞を減らし、IL-18を添加することで培養効率を上げることができることは分かっており、今後は昨年度採取し、保存している細胞を用いて手技の標準化を目指したい。そして、腹水から調製した活性化ガンマ・デルタ型T細胞細胞が、抗腫瘍活性を有することを明らかとし、臨床応用を考える上でより有用なデータが得られると考えている。
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