2018 Fiscal Year Research-status Report
EGFR-p53抑制機構を標的とした消化器癌治療の基礎研究
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18K07288
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
兵頭 一之介 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60416469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 祥之 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (00649288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | p53腫瘍抑制遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌抑制遺伝子であるTP53は悪性腫瘍の約半数において変異型失活をきたし、また野生型(wt)TP53腫瘍においても、TP53 の機能を抑制する癌遺伝子Murine Double Minute (MDM) 2 やMDM4 によりp53機能は低下している。この点から、我々は MDM2、MDM4 を標的とした新規核酸医薬(siRNA)の開発研究を行っており、MDM4を発現するwtTP53 細胞株に対してMDM4 を標的としたDNA chimera型siRNA(chi-MDM4)の特異的細胞増殖抑制効果を示した。さらにこれらの腫瘍ではMDM2を標的としたchi-MDM2を併用することで相乗効果が得られることを報告した(Oncoscience 1, 830-843, 2014)。消化器癌においては、p53野生型の頻度は40-70%、MDM2高発現の頻度は25-70%、MDM4高発現の頻度は胃癌や大腸癌では19-49%と報告がある。消化器領域の腫瘍に対しては、未だ高い治療効果の得られる化学療法は、見つかっておらず、本研究では、EGFRシグナルに対する分子標的薬を中心に、これらとchiMDM4・chiMDM2を併用することにより強い腫瘍効果得られるかを検証し、新しい消化器癌の治療法の開発をめざす。 研究初年度の目標はEGFRシグナル阻害のMDM2/MDM4によるp53制御への影響を明らかにすることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の目標はEGFRシグナルのMDM2/MDM4によるp53制御への影響を明らかにすることである。 MDM4陽性野生型(wt)TP53 消化器癌細胞株のうち、EGFRシグナルに関わる遺伝子の変異を有する細胞株HCT116, LOVO, SUN-1と変異陰性の細胞株NUGC-4を実験に用いた。各細胞株に対するchi-MDM2とchi-MDM4の単独及び併用時の細胞増殖抑制効果をWST-8アッセイで解析し、遺伝子変異のp53活性化への影響を解析した。 MEK阻害薬によってchi-MDM2/chi-MDM4の増殖抑制効果が増強されたものについては、フローサイトメトリーによって細胞周期とアポトーシス解析を行った。また、ウエスタンブロットにより、MDM2、MDM4、p53、細胞周期制御分子(p21WAF1、cyclin D1/D2/D3, CDK4/6,pRBなど)、アポトーシス関連分子(PUMA、NOXA、BAX、Caspase8/9/3など)の発現解析を行い、その機構を解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに各シグナル伝達系解析に適した細胞株に対してchi-MDM2/chi-MDM4 と分子標的薬の共培養を行い、併用投与における細胞増殖抑制効果を検証する。併用効果の定量的評価には、Chou とTalalay による計算方法であるCombination Index を使用する(Chou TC, Talalay P. Adv Enzyme Regul. 1984;22:27-55)。chi-MDM2/chi-MDM4の増殖抑制効果が増強されたものについては、フローサイトメトリーによる細胞周期解析とアポトーシス解析、ウエスタンブロットによる細胞増殖制御・アポトーシス制御に関連する遺伝子発現解析を行い、その機構を明らかにする予定である。
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